ボストンに着いたのが去年の12月28日で、きょうで1年が過ぎた格好になる。玉川上水の実家を出てから18年、9度目の引っ越しだった。私は人生でまだ一度も更新料というものを払ったことがない。いまの家は15ヶ月契約なので更新することになりそうだけど(いま引っ越す体力ないです)、更新料という概念はないらしいのでまあよしとしよう。散歩しながら、1年前のきょう、同じ道を通ったことを思い出していた。

フェンウェイの駅前はがらんと抜けて広漠としていて、鈍色の空に倉庫街みたいな建造物、立ち枯れたススキの黄色くらいしか色味がなくて、こんなうら寂しいところで暮らしていけるかとたいそう不安になったものだが、げんきんなもんだ、いまや日本から帰ってくると安心感に包まれる。思い起こせば実家を出て最初に住んだ神山町の部屋を内見したときも、そうだった。山手通りをびゅんびゅんクルマが飛んでいき、店らしい店もなく、なんとも寒々しく感じたのを昨日のことのように思い出せる。

神山町富ヶ谷鵠沼海岸、松見坂、淡島、池の上、東北沢、三軒茶屋、フェンウェイ。場所は変われどいつも、見知らぬ心細い風景が、見知った馴染みの景色に変わってきた。心細くなるのが好きだという話を以前書いたけど、心細さがいつの間にかホーム感に取って代わられていくのも好きなのかな、と思ったり。次の転居先についてはまだ一切、どこの国になるのかすら、あてがありません。いよいよ根無し草感が出てきた気がする。