木曜はクラシックの日。対位法、長調短調で1つずつ作曲という課題、全員の前でスライドにかけられて、べた褒めしながらコテンパンにやられる。最初ほがらかだった先生だが、わりと嫌味を言うことがわかってきて、みんなもだんだんうんざりしてきている。会社にいたらそこそこ働いてるのに味方を作れないタイプの人だな…。おれはどうしても脳内に浮かんだメロディを書いてしまうので、鬼のように禁則に抵触して赤字だらけになる。あとまだ授業ではやっていない進行を書いてしまって、これは3週間後にやるから、せっかちだな君は、みたいなコメントをいただく。うまい子はもっとメカニカルに、いま手持ちのルールから立ち上げるように作ってくる。

でもずっと暗黒大陸だった厳格対位法の世界が少しずつわかってくるのは十分におもしろい。近現代の音楽とはだいぶ異なるルール体系に基づいているので、逆にいまの音楽もこれはこれでひとつのルールに基づいた世界でしかないんだなーというのがわかる。自分の国が世界のすべてに見えていたのが、別の国を旅することによって視野が拡大されるのに似ている。休み時間にスタバでアーモンドミルクのチャイティーラテを頼んだのだが、アーモンドミルクがめんどくさかったらしくだいぶ後回しにされて次の授業に遅刻した。アーモンドミルク祭りのポスター貼ってあったから頼んだのに!

その後トーナル2、セカンダリサブドミナント。具体的にはナポリの6、イタリアの増6、フランスの増6、ドイツの増6。増6度のノートをとっているうち、脳内に「蔵六の奇病」がぐるぐるし始めて乗っ取られた。とにかく古典調性のなかでは転回形をぜんぶ区別するのだが(ドミソとミソドとソドミは別の和音として区別する)、それを一緒くたに扱うコードネームの世界で育った人間にとっては違いを聞き取るのがまず難しく、しかしそこの感性を上げることでこれまで気づきもしなかった音楽のニュアンスが受け取れるようになる。なるといいな。なるかもしれない。