ロジッククラス、最後の授業はツアーに出ていたエリンが帰ってきてみんな拍手。ここ3週間の代講の退屈さと比べると、エリンは求心力あるしときには辛辣なことも言ってみせたりして、壇上に立つ人間としての才能をやっぱ感じる。今週はコラボ制作音源の発表会。「誰からやるー?」セドリックがいのいちばんに手を挙げたので笑ってしまった。もめたのを知ってるエリンがわざとらしく「ふたりで作ってみてどうだった?」って聞くと、セドが「最初のうちはコミュニケーションにてこずってうまくいかなかったけど、あるときからコラボがワークし始めたのでいい感じに仕上がったと思う」と模範解答。

曲は拍手を受けた。エリンが「とにかくボーカルが最高。ただリバーブがウェットすぎるので、ドライでも聞けるように録る努力をしなさい。トラックは及第点かな。もうちょっと独創的なアイデアがあってもよかったわね」とのコメント。おれは「セドリックのボーカルがよく聞こえると思うけど、いちばんすごかったのは彼のミキシングで、おれのちゃちなトラックがものすごい良くなったんです」と言おうとして、まあ言ったのだが、半分くらいしか通じる英語にできなかったように思う。ギギギ。他の人が発表してる隙にセドリックと握手。「お前、作り始めたら手が早いし、あと何曲か作ったらトラックメイカーになれるぜ、続けなよ」お世辞言いやがってw。

「ありがと。セドは秋で卒業でしょ、そのあとどうすんの?」「俺?夢は山ほどあるんだよね、まずLAに行くつもり。そんでコネを作って、スーパーシンガーアクターモデル&プロデューサーになるんだ」190cmでタトゥーまみれの大男の、にっこり笑った目が子供の目をしていた。おっさんが水をさす気にもなれず、「君ならなれるよ、ファン代表として言うけど」と応えた。肝心のミキシングだけど、ほんとにDAW上でレベル調整とコンプしかかけてなかった。フェーダーオートメーションすら使ってなかった。ただそのボリューム調整が、なんつうの、ボンキュッボンつうの? おれには臆病でちょっとできないくらい、大きくしたい音は大きく、引っ込めるとこは引っ込めてて、見せてもらえば何の魔法もないんだけど、やっぱりちょっと自分にはできないなあと思わされるところがあった。

ハーモニーはコンスタントストラクチャー、さらっと撫でるだけって感じ。そのあと自習室でちょっとハーモニーのおさらいをして、すっかり冷房に殺されそうになったので外のベンチでトーナルの予習に着手して、帰宅したら疲れでベッドに倒れこんでしまった。目覚めたら深夜で、ぼんやりパソコンを開いたらすごい数の着信がLINEに来ていて、見た瞬間にウワッて思い出したのだけれど、8時半に友達の録音に参加する約束をしていたのだった。完全にすっぽかしてしまった。視界がぐんにゃり曲がるような感覚を覚える。あとから続いてものすごい切腹したさ、消えてしまいたさ。なんとかこらえてお詫びのメッセージを出すが、人生を通じて年に1、2度はやらかしてきただけに、もういい加減ほんとに自分が自分でダメすぎてしんどい。頭を抱えながら夜明けを待った。