寝坊しかけて、チャリがいちばん速いだろって思ってチャリ担いでドアを開けると、そうだ、ここボストンだった。もう日は高いのに気温は-6℃、路面が真っ白に凍ってる。真っ白なのは夜のうちに撒かれる融雪剤のせいもあるのだが、とにかく戻るわけにもいかず漕ぎ始める。当然、滑る。なんとかグリップの効きそうな日向を選んで走るが、おっかなびっくりなのでスピードが出せるわけもなく、それでもなんとか到着。駐輪場に放り込んでる時間なくて、校舎の真ん前に停めた。

朝イチは学科のクラス分けテスト。学科は大丈夫だろうと思ってたら、これがぜんぜんさっぱりハイレベルでわかんない問題ばっかだった。しかもなにかと記法が違うんだよね。これはマズいぞ…。右隣の子はじゃんじゃか埋めていて焦るが、左隣の子は30分もしないうちにギブアップして、ほとんど空欄で出てってしまった。そうかそういう子もいるのか。時間はどれだけ掛けてもいいというのでなるべく粘ったが、12時から実技のクラス分けテストがあるので、そちらに照準を合わせるべく11時半に切り上げた。

あと20分粘って実技に駆け込んでもよかったんだけど、それで実技までボロボロになるよりいいかなーと思って、トリアージだ。バークリーはキャンパスというのがなくて、街なかの特定エリアにビルが散在していて、たぶんバンタンとかの感じに近いと思う。そのなかで器楽系の学科が入ってる建物の1階がベース科で、ロビーにはベースの練習してる子がもうちらほら見えた。ロビーにちいさなコーヒーカウンターがあって、陽気なおっさんがスタンプカードくれた。

オーディションは2部屋用意されていて、ひと部屋につき先生2人、なんだスティーブベイリー出てこないじゃん。ちょっと気が楽になった。そしてオーディションそのものは、もうなんだかやたら褒められて、心底心配になった。ちょっとゴーストノート入れただけでワオ!、ディミニッシュ弾いたらまたワオ!で、ベリーグッドベリーグッドで、不安しかない。もちろんぜんぜんベリーグッドじゃないのは自分でもよーくわかってるのに。これが褒めて伸ばすってやつか。アメリカこわい。

終わって、ベース科の教員室に呼び込まれて、なんかフレンドリーなおじさんいるなーと思ったらベイリー先生だった。まじかよ。少し日本の話とかして、指導してもらいたい教員いる?って言われたので慌ててリンカーンゴインズって答えたんだけど、ヴィクターベイリーって言えばよかったかな。モゴモゴ。したらゴインズ先生は奥さんが日本人だから君にちょうどいいよ、って言われて、そしたら隣にいたコリアンのジェイルくんが「ディスティニーだね」って言うもんだから、なんか盛り上がって指導教員半決まりみたいになってしまった。

次の留学生向け英語クラス分けまで少し時間があったので、ロビーでテクノロジー初級のテストアウトを受けてしまうことにした。テストアウトというのは期末試験が学期前にもある仕組みで、合格点を取ればその単位がもらえて、その枠に別の授業を入れられる。在学期間を圧縮したい生徒には必須のシステムなのだが、そのチュートリアルとして、テクノロジー初級のテストアウトがオンライン開催中なのだった。ググりながらできるので、9割正解で合格。

またビルを移動して、いよいよ英語。マークシート70分、エッセイ30分、インタビューの3部構成で、マークシートが意外とがっつり大量にあって、がっつり文法とかやらされた。誰だよ実地で文法は二の次みたいなこと言ったの。so that構文とか25年ぶりに思い出して疲弊した。エッセイはいったん日本語で書いてしまえば、簡単な英文に訳すことで読むに耐えるものにはなった気がする。インタビューは世間話で理解度を試されてる感じ。周囲の留学生は例外なくめちゃくち流暢で、ボロボロなの俺だけ。ほんと自分の英語のレベルの低さがすごい。

しゅんすけ君という18歳にしてりんけんバンドのドラマーだった子とダベってから帰宅して、やっぱり倒れこんだ。英語も楽器も桁違いにがんばらないと並のレベルにすらキャッチアップできなそう。それでも少しは楽器を弾けたので、すこしだけ気が楽になった。書き忘れたけど、中国人のご子息で父兄同伴でオリエンテーションを受けている子がいて、そうか18歳だった!って思った。毎日泥のように寝てしまう。部屋はまだがらんどうのまま。