11年ぶりにお目にかかる方と夕食をご一緒した。11年前、僕はインタビュアーで彼女はインタビューイで、しかしお互い駆け出しといえば駆け出しで、すぐに彼女は才能が認められスターダムを駆け上り、僕は変わらずドブさらいみたいな地を這い回る日々で、僕には僕の、彼女には彼女の時間が流れて、それである日、ささいな縁から互いの世界線が交錯して、再会に至ったのだった。

その間に僕はすっかり彼女のファンになっていて、かつて数時間だけ話をしたことがあるという記憶の宝物を心の中で誇らしげに握りしめながらひそやかに作品とだけ向き合ってきた。何より素晴らしいのは、発表されるたびにテイストがどんどん自分好みになっていくもんだから、年々のめりこんでいけるという一種のファン冥利を味わわせてもらってきたことだろう(年々醒めていくのはよくあることでしょう?)。

それでお目にかかったらかかったで、11年来の友達なら何人もいるけど、初対面があってそれからすっかり時間が抜け落ちて再びお会いする、という体験の不思議さにぽわんとなって調子に乗ってしまい、ずいぶん軽口や失言をやらかして、帰りの駅では電車に飛び込もうかと思う程度には凹んだのだが、それにしてもうれしかったな。幸せな時間だった。若い方にはほんと申し上げたいのですが、生き延びてみるものですよ。我ながら図々しいもんだけど。