3/11 瀧坂夫妻のエスコートにまんまとハマり、世間から遅れること5年余、ワタクシにも韓流ブームがやってきました。ドラマじゃなくてアイドルだけどな! とりあえずKARAとSNSDを聞いてるんだけど、素晴しいよKアイドル。ぎゅんぎゅんきとる。
SNSDこと少女時代は、超ウェルメイドなトップグループ。みんな脚長くて顔ちっさくて、語学堪能だったりハーフだったり、熾烈なオーディションと優性思想を想起させる、ミス・インターナショナル的審美眼。

一方のKARAは、SNSDに比べると背も小さいしクオリティにもB級感があって、より日本のアイドルという存在に近い。バラエティ番組とか出てる感じだし、もっと言っちゃえばハロプロ的だ。このRock Uという曲、スラップ交じりのベースをストラクチュアの軸にメロウなハコギとシンセが絡むという、ちょっと我が国では近年聴けないスタイルの80'sマナーなアレンジメントで、実に素晴らしい。

瀧坂の説明によると、韓国アイドルというのはSNSD路線のほうが長く王道だったんだけど、ちょうど先週の歌番組でKARAがSNSDを僅差で抑えてランキングトップになる、という下克上があったとのこと。そしてそのトップ奪還曲Honeyは、まるでパラパラなコレオに、コード進行はまんま中原めいこ「Dancing in the memory」でシンセ音はマイケル・フォーチュナティというw、こんな素直なスタイル、日本では当分の間、聞けそうにない(不景気が終わるか戦争が始まるかでもしないと)。

このインターナショナル的なものが日本的なものに取って代わられるという現象はサウンドプロダクションにおいても同様で、Kpopというと、我が国よりずっとアメリカナイズドされた「いわゆる洋楽」っぽい本格サウンドが主流だったはずだし、特にR&B領域での本物感は、日本のシーンのそれをかなり引き離していた印象だ(チャートゲッターの話よ)。それがなんで2009年になって、こんなベッタベタにアイドルマナーのソングライティングが浮上してきたのか。
そこで思い出すのが作り手の世代論みたいな話で、たとえばちょっと前、CM音楽に妙にアーリー90年代ないし渋谷系サウンドが使われだした時期があって、それはちょうど90年代に思春期を過ごした世代が現場のディレクターとして頭角を現し始めたからだ、という現象をみんな記憶してると思うんだけど、じゃあいま韓国でベタなアイドルポップを作ってるトラックメイカーたちが思春期だった頃に何があったんだろう、って振り返ると、それはやっぱり、金大中による日本大衆文化の段階的開放措置じゃないかな、と思った。
韓国の日本文化の禁制措置の実際がどんなくらい厳しかったか(厳しくなかったのか)っていうのは正直ちょっと想像が付かないんだけど、マンガにしろ音楽にしろ、入手できるにはできるけどある程度の後ろめたさは伴った、ってくらいが実際だったみたいで、それが大手を振ってエンジョイできるようになって、いろんなことが変わったんじゃないかな、というくらいは想像がつく。そのタイミングで音楽や日本のアイドルにのめりこむ思春期だった子が、いま10年経ってチャートミュージックの、もしくは芸能界の現場に台頭してきたみたい。ごめんこのくだり全部想像。
でもって結局のところ、俺がいちばんぎゅんぎゅん来たのはこの曲だった。2008年春にトップランカーだったこの曲は、コスメティック・ビューティなオールドコリアンスタイルのアイドル像と、近年になってめきっと台頭してきたジャパニーズスタイルのアイドルポップ歌謡感覚がコンビネーションした、過渡期ならではのハイブリッドだったんじゃないかな、とすら思えたりする。

だから適度なエキゾ感もあって、ビジュアルは2000年代のものだからなおさら時代感が多層的に畳み込まれていて、言葉もなにゆってるかさっぱりわからないのに英語の発音だけはネイティブ臭くて、あと母音と子音が基本ワンセットなアルタイ語族のポコポコした感じが符割りに当たって気持ちいいアーティキュレーション醸し出してたり、なんか夢の中のことみたいなんだよね。彼岸のアイドルポップ、とまで言ったら言い過ぎだけど、もういつのどこのどういう文脈のものなのかさっぱりわかんなくなる眩暈にも似た感じに、ぎゅんと来たんだなあ。