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お世話になった出版社から大リストラのうわさが漏れ聞こえてくる。いくら耳慣れた話題とはいえ、あの人が放出される、と固有名詞で聞かされるとのっぴきならない感情に襲われる。50も近くて、独り身で、背格好が俺にそっくりなMさん。あまりに他人事じゃない。再就職先は見つかるのだろうか、心が折れてしまわないだろうか、もし病に伏せたら誰が看病するのだろうか。

余計なお世話なことをソファで考えていたら、心の中に突如ビジュアルが広がり、景色の中でMさんが「先に待つ」と言って手を振ってはにかんでいた。背後の様子からそこはグループホームかどこかの中庭みたいだった。職も身寄りもなくしても蓄えがあれば何とかなるみたいだ（妄想の中だけど）。俺にはそれすらない。

そんな話をGrampのゴッドマザー、キョウコさんとしてると、いつも「骨ならアタシが拾ってやっから！」と笑い飛ばされる。彼女のタフさには一生勝てそうもない。

ランプはいつもと違う雰囲気、ギャラリー多数。いろんな人の“俺が見たすごいスケーター”バナに出てくる、マジカルの元気くんが入ってる。緑のvansに緑の長髪、はじめて見たけど、彼すんごい魅力的だね。ファンになっちゃった。こないだのサイラスくんはとにかく「すげえ！」って感じだったけど、元気くんはいちいち「えーッ」って気づきを与えてくれる。みんなもいつもと違って「どうなってんの」「いま何したの」ってゾワゾワしてる。

いっぱいすんごいもん見たなあ。壁キック（動画上）、柱にテール（動画下。この次でメイクした）、壁でターン、両手グラブしてワンフットでブラントするやつ、なんか股の間からデッキ抜いてワンハンドでリエントリーするやつ、ボンレスから板をバトンみたいにトワリングしてドロップするやつ、もう「〜なやつ」としか形容しようがない。

もう自分が滑るのなんてどうでもよくなって１時間以上見ていたんだけど、１本１本が圧倒的にクリエイティブ！　このランプを使ってどんだけのことができるのか、その都度、自分の頭で考えてる感じがする。だから彼のトリックは教科書には載ってない。こんなことできるんだ、やっていいんだ、って毎回見る者のフレーミングを拡張してくれる。そしてそれを裏打ちする圧倒的なスキル！　スケートの魅力を刷新させられた晩となった。