朝もはよから二俣川へ。二俣川、というのは都民にとっての鮫洲や府中に相当するもので、要は運転免許試験場の町である。午前の受付が8時半から9時、午後の受付が12時半から1時という恐ろしいお役所仕事をやってらっしゃるので、仕方なく、明日からの予行演習もかねて7時過ぎに家を出る。教習所でモッチーに聞いたところによると、二俣川に至る相鉄線に乗るためには、以前は大和まで出なければならなかったところ、数年前に湘南台を終点とする支線ができたので楽になった、とのこと。しかし乗ってみるとこの「いずみ野線」という新支線、すごいデスっぷりで、風景ひとつひとつに魂を吸い取られているうちにほうほうの体で試験場に辿り着いたのだった。

しょっぱなの駅が「ゆめが丘」。閑散としたホーム、未来っぽい建築は雨風のヤレが目立ちやすい。極めつけは「緑園都市」。名前も名前で趣味の悪いSFみたいだが、住んでる人には申し訳ないけど、この駅を巡るランドスケープの連なりは、ニュータウンがどうしても抱えてしまうディストピア的な側面だけを抽出させて寒天培地で純粋に増殖させまくったようなものすごい整然さといびつさをビシビシと放ちまくっていた。電車で通過するだけで疲弊した。あとこの路線は明らかにマナーが悪い気がする。乗客そんな多くねえのに車内に缶カラ転がってたり、股広げて座ったり、なんかねー、リラックスと無礼をはき違えてる感じの緩さが満ちていて、なんだろ、たまたまかもしれないけどさ、いいじゃん横浜まで出たらちゃんとするからさー、みたいな人が多い気がしたな。

そんで二俣川の試験場なんだけど、政治家からニートまでが発行を待つ試験場特有の平等さは鮫洲とおんなじなんだけど、ここ、すごいオペレーションが悪い。フロアに白線が引いてあって、○○の方、白線の内側に並んでくださーいって呼ばれるんだけど、まあなんとなく想像はついたにせよ、グループごとに呼ばれてから自分の名前が呼ばれるまで、最長の人で15分くらいかかるわけ。収容所や学校の廊下じゃないんだからさ、大の大人を15分立ちっぱなしで待たせとくってのはちょっとどうかと思った。なんかつまんねー話してんなー俺やめやめ。それにしても見学した大型二輪の一発試験はもんのすごい難易度で、中止者が続出しまくり、とても俺じゃ太刀打ちできるレベルじゃない。金で買って正解だった。

帰り、病院に寄って健康診断書をもらう。はずが、午前の受付には間に合わず、午後に再び足を運ぶはめに。レントゲンについて、別に病気ではないが胸郭が狭く、心臓がアンパンみたいに丸く押しつぶされている、という所見を述べられ、そう言われるのは初めてだしそう言われたところで何をどうにもできないので、はあそうですか、と言って帰ってくる。紙ペラ1枚5000円ナリ。そもそも市の保健所で健康診断書の発行業務をやっていないことにも驚いたのだが、いや、しかし、こういうのは、ほら、ねえ。福祉国家以前の問題というか。あと大きい政府と小さい政府を右と左に当てはめるのはあんまり適切じゃないどころか物事の本質を見誤る傾向だと思うな、なんてふうに話がドリフトしてみる。