笑金笑い飯を見た。ネタもキレ芸も相変わらず面白いのだけれど、ひとつ気になったのはネタ回しで、おなじみの「替われ!」スタイルがマニエリスムに差し掛かっている。具体的に言うと、「替われ!」でひとネタごとボケを交替していたフォーマットを乱そうと策を弄しているわけだ。たとえば「俺連チャンな」とか、相手の話を聞かず延々繰り返す、とか。あらゆる決まり事はある時点からマンネリに陥って、そしてそれを打破しようと変化球を発見し、そしてまた決まり事に収束していくわけだけど(けっきょく勝負球はストレート)、そのプロセスにおいて腐ってしまう現象も少なくない。笑い飯のふたりがこの難しい時期を、余裕綽々の不敵っぷりで乗り切ってくれることを心から期待している。

さて打ち明けてしまえば、凹んでいる原因のメジャーなところはジャリさんで、苦情が来たのだ、管理人と大家から、立て続けに。苦情主はいずれも同じ隣人で、タクシー運転手だという。いわく、夜番のときは昼間睡眠を取るのだが、それがジャリの吠え声で妨げられている、と。ジャリが吠えるのは前にも書いたが留守番のときで、前は半日まで大人しくしていられたのだが、引っ越してから、1時間と保たなくなってしまった。そんで現在、留守番させなきゃならない場面というのはサーフィンのときだけなので、吠えてもなるべく苦情が来ないような時間帯を選んでサーフィンに行くようにしていたし、ほんとは3、4時間入っていたいところを2時間で切り上げていたのだが。隣人が夜勤となるとうまい時間帯を見つけるのもちょっとやそっと難しい。そんでいますぐジャリが長時間の留守番できるようになることも難しいし、かといって俺はサーフィンのためにここに越してきたんだから、それを断念するのも難しい。

難しい難しい言ってると気分まで難しくなってしまって、ふさぎ込む。とりあえずしばらくはサーフィンは控えようか、と思って部屋にいると、なんだかなんのためにここに越してきたのかまったく意味がないような気になってきて、ふさぎ込むと、昼は長いし、夜も長いし、寝てばっかりでも病人みたいだし、外から聞こえてくる人の話し声や笑い声に妙に敏感になったりしている自分に気づく。蓋をしておいた無力感や孤独感まで顔を出したりして、酷いことになる。ジャリはジャリで引っ越しにまつわるストレスが大きいらしく、なにより1階になったので、ドアや窓の外をこんなに人が通過することに慣れず一日じゅうイライラしていて、それがまた俺のイライラに拍車を掛ける。ああこれが育児で、あとちょっとエスカレートしたら虐待ってことにもなりかねないなー、なんてボーっと思いながら、もしそうなったら自分に歯止めを掛けられるかどうか自信がなくなってくる。そういやジャリと暮らし始めてすぐの頃、育児ノイローゼみたいになった時期があったのだけれど、あれはどうやって脱したのだっけ。