もう、酒を止めて1年、煙草を止めて2ヶ月近くになる。もとより薬物はクリーンだし、451もつきあいで飲む程度で家では飲まないから、ほんとになんというか、精進料理みたいな生活だ。タンパク質は大半が大豆によっており、次いで魚。肉、殊に牛肉はほとんど食べていない。

たまに、フライドチキンやポテトチップスみたいな脂っこいものを食べてみるときがある。それが今の僕にとって精一杯の、たとえば酒が弱い人がテキーラを煽ってみたり、スモーキンメンがシャブをカクテルするような、ちょっとした冒険なのだ。いかなるレベルにおいても、人はほんのちょっとだけ足を踏み外してみたくなったりするみたい。案の定気持ち悪くなって、それでなんとなくニヤリとする。

酒を飲まなくなって、人付き合いはほんとに大幅に変わった。なんであんなに来る日も来る日も、誰かに電話をかけては誰がどこへ飲みに出ているのか把握してそれでどこかの店で誰かと落ち合ってはたわいもないことをしゃべり酔いどれて床についていたのか、あの生活の感触も動機もまったく思い出せない。

俺は元気になるんだろうか。たまにこのトンネルがほんとに抜けられるのか不安になる。だがなるだろう、と頭を振り払って、イメージする。元気になった俺は、だがもう毎晩飲みに繰り出したりはしないだろう。そういう風になったことだけはわかるのだが。

ゴールデンウィークなんだから少しは外出しようということで、海芝浦へ行った。事前知識もりもりでの探訪だが、それでも十分すぎる景観力があった。タイムスリップコンビナートという書名の意味がようやくわかった気がした。鶴見線そのものがタイムスリップ装置だったのか。帰り国道という無人駅で下車。鶴見川べりの低地を歩くが、駅舎の素晴らしさに興奮したせいで、肝心のリトル沖縄に寄るのを忘れたまま、帰宅。