googleオブセッションと呼ぶには大げさすぎるけれど、12年ほど前、手ひどく怒らせてしまって絶交された友達の名前が突然降りてきてシャワーキャップみたいに頭をすっぽり取り囲むので、検索窓の誘いに抗えずその名をgoogleに放り込んでみたら、コンタクトを取らなくなったあと、彼女がデビューして数枚のCDを残していたことが判明して、それどころか現役で活動を続けているようなんだけど、とにかくそのCDを聞いたところで何か当時の贖罪のひとつもできるわけでもないのに、とにかく聞かなければいけないような気分に囚われて動けなくなり、今度はヤフオクにそのユニット名を放り込んでいきおいその場で落としてしまった。そしてきのうそのCDが届いた。

ピアニカ前田さん、ASA-CHANGといったエアガレージ(俺が10代の長い時間を過ごした国立のスタジオの名前だ)おなじみの面々に加え、小西さんが1曲参加している。国産の卓に安マイク、空間的なぶっきらぼうさ。ものすごく国立っぽい音だ。数曲モーリー・ロバートソンが歌詞を付けているのは何の因果だろう。歌うは加藤まひる、俺が怒らせてしまった女の子だ。軽くハスキーで、中域から下を転がすように節回すクセから、すぐ彼女とわかる。そうか、こんな音楽を奏でていたんだねえ。ちょっとお仕着せ感がないわけじゃないけれど、でも俺や君が長い時間を過ごしたあの場所に似つかわしい音像だと思ったよ。少なくとも94年時点の俺にとっては、太陽は僕の敵よりいかれたBABYよりも切実で、身も蓋もないこと言えばリアリティを有した音だ。それがどんなものであれ、血に肉に染み込んだ音場を持てたことは幸運だったと思う。あと恐ろしいことにはてなにレビューがあったので貼っておく。これ。

どんな経緯で彼女を怒らせてしまったのか俺はいまでもはっきり覚えてるけど、それはここには書かない。ただそれが絶交に至ってしまったのには訳があって、それはいかにも俺らしい話なので書いておいてもいいかと思う。彼女の逆鱗に触れたのは俺と、俺の中学の後輩でギターウルフのローディをやっていたダイスケという男の子なんだけど、ふたりして彼女の部屋を追んだされたあと、「ダイスケよ、お前明日まひると会うんだろ。なんかうまく言っといて怒りを解いといてくれよ」とか言って別れたんだよ。そしたらダイスケがバカだから翌日「ゲンが『テキトーにうまく言っとけ』ってさ」ってまひるに言いやがって、それがまひるをほんとに怒らせた。俺の不誠実が。そして12年経って俺は変わらず不誠実なままで、なにかやっかい事や揉め事があったら、ことの解決なんかどうでもよくて、ただ「うまく収拾してくれればそれでいい」と思う俗物のまま歳を重ねた。うまく収拾してそれで死ぬまで収拾しててくれればそれでいいみたいなんだ俺はほんとに。ごめんよ。