今日で終わらせるつもりだった仕事が一向に終わらず、週明けに持ち越すことを(勝手に・土下座>K氏・O氏)決意してリキッドへと向かう。リョウタさんから電話があって、渋谷駅前では絶望的にタクシーがつかまらないから、うちの前で拾って駅を回って新宿に行ってくれないか、と言うので、新宿とは逆方向で東京無線を停めた。山手通りならまだ、戻りのクルマが簡単に拾える。三鷹から戻ってきたという車の窓には、見た瞬間ちょっと可笑しくて吹き出してしまったのだが、雪が積もっていた。そしてクルマが渋谷駅に差しかかると、リョウタさんの懇願の意味がすぐに飲み込めた。246、もうセルリアンあたりからタク待ちのアンチャン姉ちゃんが鈴なりなのである。雪、年末、タクつかまんない。この浮ついた感じ! 結構結構。

到着したのはデートコースの開始予定を20分過ぎた2時半だったのだが、結局のところライブがはじまったのは3時半で、1時間半近くも押すとは完全に菊地さんのペースである。先に結論を書いておくと、この日のデートコースは、間違いなく僕の今年のベストライブであり、それどころかここ3年くらいでベストだった。セットリストなどはファンの方々が挙げているだろうからここでは書かないけど、白眉は間違いなくリアレンジされたヘイ・ジョーで、リアレンジ、つっても単純にBPMを下げてテヌートのロック的ベースラインをファンクスタイルに変えたくらいなんだけど、このたくらみは完全に成功していた。極言すると、ダンスミュージックで、一度上げてしまったBPMを落とすのは、すごくすごく難しいし、勇気のいることだ。

盛り上がるからって、BPMはどこまでも上げるわけにはいかない。曲によって違うけど、具体的にハウスミュージックなら138あたりに分水嶺があって、それを超えると裏打ちのグルーヴがどんどん消え始め、145あたりで完全にオンビートの、いわばビートロックなんかと同じグルーヴ感になってしまう。それはすでにハウスミュージックではない(ワープかハピハコだ)。ヘイ・ジョーも発表以来、ライブ毎にBPMを上げてきて、それによって熱狂を呼びに呼び、そして、もういいかげん臨界点に達していた。それは、グルーヴとノングルーヴ、狂騒と鎮静、興奮と退屈のどっちつかず運動(半勃起状態)を旨としてきた菊地さんにとっては不本意な状況だったろうし、実際アッパー一辺倒に受け入れられていく第一期のレパートリーをやってるのは見ていてツラそうだった。

で、(ほんとのとこの理由は知らないけど)ガクンとBPMを落としてきたわけだ。Pファンク・オールスターズかと思うようなとこまで。そしたらあのロッキンなヘイ・ジョーが、かつて感じたことがないほど、ドロドロの寸止めファンクとなった。フロアは一瞬とまどっていた。だけど、ファンクの本質である16分の裏表の等質性(通常は裏が引っ込んでいるわけだから、イコールということは裏がアンプリファイヤドされてるわけだが)はすぐに十全に機能しはじめ、細分化された律動がすぐに染み渡っていった。いつものような拳も嬌声も上がらないし、モッシュもダイブもない。だけど、今日のリキッドは、いままで彼らを見た中でもっともファンクネスの高いフロアになっていた。僕はひさびさに(笑)、菊地さんのことをスゲエ!と思った。

今日のgoogle:邪願霊、小中千昭、詫び状事件