年末なれど、締め切り山ほどなれど、海だけは行きます。2週間もブランク空いちゃったもんだからもう、身体がうずいてむずむずしちゃう。今日はなにしろ恐ろしいことに、カンキくんのデビュー日だ。9割の人が初夏から晩夏までの夏が付く季節に始めたであろうサーフィンを、こともあろうに、このクソ寒くなりだした、しかも身体はまだ秋だったりするから寒さに順応しきれてないクリスマス前に始めようとは、これは俺もタバタも敵いようのない酔狂(ないしは素っ頓狂)が現れたもんだ。週の初めに「いまオシュマンズの試着室からでーす」という勢い満点の電話があったときには、この一見善良そうな面構えの人は社会人としてやっていけているのだろうかと本気で疑ったもんだ。いや、だから日経飛び出したんだろうけど(笑)。

しかも、上空にはちょっとこの時期見たことのない張り出し方でシベリアからの寒気が日本列島を覆っている(カンキだけに)。宮崎では雪。埼玉は2センチ積もったとか。脳溢血で倒れたりしないだろうかほんとうに。なんて心配はよそにやる気満点でカンちゃんは乗り込んできた。強い西風に雲が吹き飛ばされ、正月のようにうららかな陽が射しているのだけが救いだ。しかし辻堂に到着してみると(途中マジェスティに2ケツで後ろの子がボードケース2本肩に掛けて80km/hで走ってる、という凄い絵を見た)、それが大いに仇となる。海岸線に平行に吹く風は東京の比ではなかった。前日からのオンショアでそれなりにサイズはあるものの、海面はざぶんざぶん、スープは厚くダラケたチョッピーおなじみのやつで、しかも風のせいで右からのカレントが強烈。勢いで入ってはみたものの、到底乗れる状況ではない。300mほど流されたところでタバタとこりゃ移動だわな、と示し合わせる。

ところでその頃カンちゃんはどうしてるかというと、これがまた、涙ぐましいくらいの勇気で次から次へと覆い被さってくるスープと格闘していた。ボディボードは何度かやったことがあるそうで、しかも車内でインテリらしくハウツー本なんかめくっていたもんだから、スープライディングにトライしてやろうという魂胆だろうが、そりゃムリだよ、波が悪すぎる。と思った刹那、あらー、なんだよスポーツマンめ、一本腹這いで乗りやがった。これは筋がいい。俺やタバタなんて1年後には抜かれているだろう別格の筋の良さだ。へええ。しかも、上がるよー、と手を振って呼び戻すと、ぜんぜん寒くないねー、なんて笑っていやがる。道産子の血だろうか。これまた重ねて筋が良い。にしても折からの、ボードを煽られて歩くのにも難儀する強烈な西風。さっさと西側が岬でブラインドになったポイントに移らないと。

この近辺で西風が遮られる、といえば、江ノ島の付け根の腰越か、小動(こゆるぎ)の岬の東側か、もしくは稲村が崎の東側だろう、とアタリを付けて、ウェットのままクルマに乗り込む。腰越は風はかわせるものの大ダンパー。小動は具合良さそうで人が集まっているが駐車場から歩かされる。稲村の由比側はサイズ的に割れてなくて話にならない。丘ひとつ歩く労を厭わず小動に決めた。入ってみると、やはりチョッピーだし潮位も高くタプタプだが、乗れないこともない。初回のカンキくんもアウトに出てきたくらいだからゲットはずいぶん楽ちんになった。でも最初のセットを拾ったら、避けきれないところにカンちゃんがいて轢いてしまった。ポジショニングのレクチュアくらいしなかった俺が悪い。運良くケガ無く済んだけど、すごくゴメン。でもゴメンーと思いながら沖を見ると、フゥォーと嬌声を上げながら腹這いのカンちゃんがすっ飛んできた。凄い。なんであんなにたやすく乗れてしまうのだろう。俺の5回目いや10回目くらいの感覚じゃないか。やや凹む。

あとは波間が長くてそう本数は乗れなかったけど、2週間のブランクを取り戻すくらいは楽しんで、そしてブランクのツケでバテバテになって、ゲットもできなくなっておしまい。上がるとさすがに冷える。七里の海はプランクトンの関係かちょっと先の鵠沼よりだいぶん濁っていて、同じ濁っているのでも由比が浜より香ばしい匂いがする。強風は大気中のチリを飛ばしに吹きとばしまくって、大島が泳いで行けそうなくらい近く見える。伊豆なんて、あれは真鶴あたりか、町並みまで見える。沖には雲の形がはっきりと映り込み、そして雲間は陽に射られて青づいて、エメラルドとグレーのモザイクをなしている。すっかり機嫌が良くなって、帰りの車中では、大いに与太話に興じた。よく考えてみたら初対面なのにカンちゃんもタバタも打ち解けてくれて、要するに桃太郎のいないイヌサルにキジが加わった、とでも言えばいいのだろうか。そんな感じだ。<96回目>辻堂・一本松、強烈西サイド〜サイドオン、肩、チョッピー、20分+2時間半

晩、青山マンダラでライブ。サポートで入ってるカツヤのユニットだが、またしてもチューニングが狂い非常に苦戦する。スタンドがなくて、セッティング後に壁に立てかけたときに狂ったんだろう。言い訳するわけじゃないけど、バンド形態じゃないので出番前や曲間にチューニングすることができない。なにしろ映像と同期したオケがステージの始まりからおしまいまで完璧に組まれていて、我々サポートプレイヤーは流れてるオケに乗っかることができることのすべてだ。テレビの仕事みたいだ。せーの、もなければタンマ、もできるわけがない。運良く狂ったのが4弦だったので、分離の悪いキックと混ざって最悪の事態はしのげたが、フロアにいた10人くらいは気付いたと思うし、気付いていてほしい気もする。次から荷物になるがラックのチューナーを持っていこう。ちなみに出演したバンドのすべてが、トラックをCD-RかDVで流していた。ライブハウスも変わったもんだ。

今日のgoogle:薩摩治郎八、薩摩千代子、吉薗周蔵・トンデモ