太平洋には豪勢なことに、フィリピン沖と小笠原沖、ふたつの台風が鎮座していて、しかも双方とも偏西風どこ吹く風、とでも言いたげなイレギュラーなコースを辿っています。ただでさえ難しい台風にまつわる波予想だけに、これだけ要因が多いと完全にお手上げですね。読めないとなれば取るべき行動はひとつ、とりあえず行って確かめるしかないのですが、なんでもとりあえず飛び込んでみるもんですね。いい思いをして帰ってきました。最近はっきりわかってきたのですが、たとえば同じビーチで同じサイズが3日続くとするなら、底砂の状態は初日がベストであとになるほどダンパーになってく気がします。そんでまただんだん調子良い位置に砂が着いていって、ベストな波が立って、荒れて、ってサイクルなんでしょうか。とにかくこの日、波はめきめきサイズが上がって、ショルダーもそれなりに張っていて、人もそれほど多くなく、ここ最近ではいちばん楽しみに満ちた3時間となりました。2本ほど、何か自分でもよくわからないマジカルな力に後押しされて冗談みたいに横に走れた。

いまになって千倉にいた頃の日記を読み返すと驚くんだけど、波はもちろんのこと、空や雲や山や風ってシーナリーをすごく見てるんだよね。ところがいつ頃からか、海に入ってもまったく余裕が無くなっていて、波待ちしていてもとにかく次の波のことだけ考えて沖を見ていて、右のほうにセットが入れば右行けー、左に入れば左ー、うわアイツに取られたチキショ今度こそー、と波を取ることばかりにガっついていて、それは一種集中している状態といえばそうなんだけど、でもやっぱりなんかでかい忘れ物をしていたように思った。思ったのは、ひさびさに夕焼けがきれいでね、この日。あーそうだった! 海って景色きれいなんだった! って思った。なんか景色とか風の感じとか波の音とかそういう視点が、完全に欠落していたのに自分でもびっくりしたね。そんで見回したら、もちろん湘南の海ははじめたばかりの去年と変わらずみずみずしい夕焼けのままでね。なんだ俺が見てなかっただけなんじゃん、って大反省したよ。<90回目>引地川河口、弱オフ、腹→肩、ややトロめ、3時間ちょい。