仕事、まだ終わらない。というかタスクが増え続けていて、気が滅入る。気分を変えるため、家事に逃避だ。まずは床の水拭き。僕が拭き、451が流し、流しては投げ渡し、ジャグラーよろしく2本のぞうきんが部屋中を飛び交う。ひととおり終わったら、今度はワックス。ボロ切れを探すが適当なのがなく、ちょうど落とすつもりだった靴下に白羽の矢が立ち、これを2重に手にはめて塗り込む、塗り込む。まずは部屋の2/3を塗るのだが、どうにも塗りムラが気になり、乾くまでお茶を、と思って片手にはコップを持っているものの、日射しを反射させてはちょこまかと修正して回る。部屋全体が終わる頃には薬液で手の皮膚ががびがびになってしまい、ややショック。小学校ではバケツにモップで塗っていたなあ、と思い出す。あの搾りたてのミルクを連想させる、いやらしく薄パープルに透ける液体。しかし化学は進化していて、つや出しの乾拭きは要らないのだった。

寒くなってからこっち、どうにも気がそぞろで困る。胸が締め付けられる。大気中の冬粒子の濃度が一気に上がって、肺胞のひとつひとつを浸食しているのだ。センチメントなんて嘘っぱちだ。と言い捨てることも簡単な歳になったが、それでもこのちくちくには、あっさりと別れを告げがたい甘美さもあり、やっかいだ。しかしそれに浸ってばかりもいられまい。大した用事もないのにバイクで飛び出し、振り切るべく無理に加速する。昔のことばかりが追いかけてくる。肩を掴まれ、逃げ切れないとわかる。