いけない、寝過ごした。小堺起床。合宿に発つ前日の4月16日を上回る、怒濤のアポ入れ&グーグル・フィーバー。いつもこうやってぎりぎりだ。まったく。電話を掛ける、掛ける、掛ける。考えてみると面識もない初めてしゃべる赤の他人に、澱みなく、かつワガママ放題な要求を事も無げに突きつけたりできるのは、お互いが同一方向の目的に向かっている(はず)、というビジネスの土俵に乗っている幻想をシェアしているからで、それはどちらかといえば当然の反対で特殊なことなんだと仕事を始めて7年目にして気づいた。だから、ちょっと僻地にあるメーカーさんとかで、土俵の部分からしゃべらなくちゃならなかったりすると、いままでは「何あの日本語の通じなさっぷり」とかプリプリしていたわけだがそんなの俺が視野狭窄のバカなのだった。

結局ことが片づいたのは19時前。またもや、19時半の千倉最終直行を逃し、鈍行で向かうハメに。新宿で千葉駅行きのあずさ号が出ていることに気づき、乗り換えがなくてラクだとばかりに乗り込むが、喫煙席に座ってしまって最悪だ。隣から、前から後ろから、煙をふかせる距離感じゃないってのに、セブンスターに口臭の混じった匂いがプップカプー(あれは、煙である以上に他人の吐いた息であることを忘れてはならない)。ヘヴィ、の部類に入るだろうスモーカーの俺だが、座席のある公共交通の喫煙席ばかりは廃止してもらって一向に構わないわ。そんなこんなで内房線に乗り換えるのだが、木更津あたりまでがツラかった。あの時間帯の都落ち列車、について詳しく語るのは、俺には荷が重すぎる。君津を過ぎるとようやくローカル線の深夜帯、という感じに。はぐれスライムが点在するような、みんなそれぞれ切実なやるせない事情があって乗っている、被虐者列車、みたいな風情を醸し出していて、それはそれで各々いたわりあって同乗している気分だ。最終23時半に千倉着。

タクシーで宿舎に戻ると、すぐさま風呂へ。ところが待てど暮らせど、シャワーからお湯が出てこない。何度トライしても、給湯器のコンソールパネルがエラーで点滅してしまう。仕方なくシャツを羽織り、強風に煽られながら屋外器の様子を見に行くが、真っ暗なのでライターで照らしている不確かさはあるものの、配管や開栓などに総じて異常はなさそうだ。なんだろう、なんだろう、なんでだろう。玄関に戻り、シャツ一枚で考える。10分も考える。まーさーかー。ふたたび屋外へ。なるほど、そうか。ここには都市ガスが通ってない! 壁際に見つけたプロパンのボンベを引っぱたくと、いかにも空っぽでございます、といった音。カルチャーショックとはこのことだよ。ここではガスは有限なんだ。今日、お風呂入れないんだ。小雨混じりの軽い嵐の中、フルチンで立ちすくむ脳裏にレモンガスのCMが幾度となく流れた。あの女。