5時半、風呂で寝ていたところをタバタに起こされる。慌ててウェットに着替え浜に出るも、うわー、ここへ来て2度目のオンショア。波はパワーなくダラダラと割れており、先に入っているタバタはいくらトライしてもまったく乗れていない。こんな波じゃ当然だ。駐車場にはゴールデンウィークだっつうんで遠方からわざわざやってきたのにこんな波かよカー! って人が10人ほど。入っているだけ無駄なのですたすた波打ち際まで歩いていき、タバタを呼び戻して、移動することに。東風を正面から受けずに済む南向きのビーチは、岬に沿って北上した和田か、内房側に渡った平砂浦か。しかし平砂浦は大きなウネリが入らないと風向きが合っても波が立たない、という評判を聞いていたので、ウェットスーツのままでクルマに乗り込み、いざ和田へ向かうことにする。

ビーチの向きが変わったあたりで防砂林にクルマを停める。おお、当たり前だが風がサイドに変わったぞ。海面はざぶんざぶんと荒れているが、しかし波はそれなりに掘れていて、乗れないことはなさそうだ。海の様子を見に来ている人は散見されるものの、みんな今日はヤメヤメー、と帰っていくばかりで、ポイントには他に5人しかいない。入ってみると、これが意外と乗れるので楽しい。なんと説明すればいいのかな、見かけの海面は沿岸の強風によりドンブラコ、ドンブラコと小刻みに揺れまくっているのだが、その揺れの下にはちゃんと外洋からウネリが入ってきていて、荒れた海面ごと持ち上げられて大きな波を形作っている。それさえわかってしまえば見かけ上の小波に惑わされることなく、外洋性のウネリを拾って乗ることができるのだ。面が荒れているだけにターン中に放り出されることが多かったが、それは俺の脚力が足りないだけだ。とにかくチョッピーコンディションでもこれだけ楽しめるようになったことに俺もタバタも大満足。<58回目>花篭、強サイドオン、腰ハラ、チョッピー、2時間半。

ちなみに房総のかなり南に位置する和田でも砂はまだ黒くて、あの千倉の白い砂浜はほんとに半島の先っちょだけでしか見られないんだ、とわかった。千歳くらいから白くなりはじめるみたい。宿舎へ戻ってシャワー、朝飯を食べたら、Uターンラッシュの前に帰りましょう。館山から海沿いを北上するルートは混雑が予想されたので、丸山町から410号線で、房総半島を斜めに突っ切る山越えルートを選択。中央線のないワインディングロードはサーフィンで疲れた身になかなか堪えたけど、でも一切の渋滞がないまま館山道のインターまで到着。その後も、穴川でちょっと渋滞したものの総じて順調に流れ続け、ちょうど正午には六本木ヒルズの横を通っていた。2時間半くらいで半過疎の村から六本人を一気見するのはなかなかビビッドな体験で、たった2日しか千倉にいなかったタバタまでが、先週の俺みたいに、トーキョーシリーはクレイジー、とつぶやいていたのだから笑う。

帰宅してすぐに仕事電話を数本。待望のグーグリング、熱狂的に3時間。なんか不在のあいだにセグウェイレポが俺ニュース入りしていたみたいで、2日間で4000を越えるアクセスがあったみたいなんだけど、しかしメールをチェックしてがっかりした気持ちになる。反応が1通もないのね(苦笑)。去年のドムリストのときの津波アクセスと、まったく状況は同じだ。ふじもとさんとかお友達は電話くれるから反応もクソもないんだけど、そうじゃなくてさー、のべ4000人も見て、しかもサイトに携帯番号まで書いてあるっつうのに(笑)ノーリアクションっつうのは、普段のアクセス数:反応メールの比率から言うとあまりに寂しい。そしてそういうチャチャッと見てチャチャッと閉じちゃうすごく大勢の人、というのが、もうネットのマジョリティになって久しいのだろう。あとこういう他人の記事を水で薄めただけの温いパクリをする人がいることにびっくりした。ムネカタくんの気持ちがちょっとわかったよ。

俺ニュースの人は5月いっぱいで更新を停止されるそうだけど、それはすごく寂しいし不便になるので困る、のと同時に圧倒的に正しい。理由は、彼は有能な人だからだ。個人ニュースサイトはものすごく便利で俺らにラクをさせてくれるけど、誰かがそこに甚大な労力を突っ込まないと成り立たない。しかもその労力に対して、リアクション、ないしはリスペクトという名の成功報酬はあまりに小さい。だから俺は、有能な人がニュースサイトなんかに時間を割いちゃ、サイレント・マジョリティの奴隷になんかなっちゃいけないと思っている。もっとほかにやるべきことがある。逆のことを言えば、奴隷としてしか役に立たない、でも奴隷をしてるぶんには有用な人、というのもいて、そういう人ががんばってニュースサイトを運営してくれれば世の中はもっとうまく回ると思う。一時期俺は、とあるニュースサイトの運営者のことをアホバカと酷くこき下ろしたが、反省して発言を撤回し、その後むしろ応援者に回った。その理由はそういうことだ。

閑話休題、電話を掛けて、恵比寿に飲みに。江口くんと、SpoonのHさん。チェコのみやげ話、恋人と共通の趣味を持つ/持たないバナ、ほか。なんか新しくオープンした、芸大生の学園祭、みたいなチャチなカフェに興味本位で入ってみる。注文が済んだ伝票にはゴミのようなピザが1200円、とか幼児向けのままごと調理玩具みたいなホットサンドが1000円、とか書いてあって、千倉生活のせいもあってか、恐ろしく憂鬱な気持ちになる。貧しいよ、あまりに貧しい! しかし食ってるうちになにがなんだか、都会と田舎とアホと利口とスノッブと脱力とオトナとコドモと鋭敏さと鈍感さと80年代と90年代にまつわる二元論が多心的にぐるぐると回ってはバターになって溶けてしまい、それを肛門に塗り込んだアナルセックスの幻影を見ながら、ほぼ自虐的な、しかしこれぞアーバン、とでもいうべきヤケクソな虚脱感に襲われて愉快になってくる。

そのあと渋谷に移って、うちの近所の設計事務所で働いているWちゃん相手にサーフィンバナ。肉体感覚への回帰と生の横溢、みたいな陳腐な話題に陥りかけたとき、ひさしぶりの阿部から呼び出しの電話が入って(ダーリーン、あなたがいないトーキョーは最悪だったわー。ねえお願い、毒を吐かせてよ・笑)、外苑前に移ってさらに酒を足す。小腹が空いたと言うと大盛りのカレーとポテトとタコの和え物が出てきて、振る舞われたからには食べなければ申し訳ないので平らげると、やがて少し胸のあたりが怪しくなってきて、良い頃合いだし泥酔する前に帰ることにする。家は、殺伐とした部屋だが、安心だ。ああ安心だ。