なかなか寝付けず、明るくなった頃、ようやく床に入る。そのため目が覚めたのは10時。朝食も摂らずすぐにウェットに着替え海へ出ると、あちゃー、昨日のサイズアップで砂が動いたのだろう、全面的に酷いダンパーだ。リーフよりのポイントブレイクだけは砂は関係ないのでマシだが、あそこは海底に岩が隆起するデンジャーゾーンなので無理。それでも選べばごくたまに乗れそうな波があったし、もうウェット着替えちゃったし、なにより昨日のステップアップで調子に乗っていたので、真っ白いスープを掻き分け掻き分け入っていく。うっわー、間近で見るとさらに酷いや。と半ばビビリながらアウトに出かけたそのとき、セットが入った。ウネリの感じからして崩れ落ちるのは自分の背後あたりだろう、と思っていたら、スルスルスルスル、と自分の回りの水が引いていき、え? え? え? え? と思っているうちにボードごと背後に引っぱり込まれていく。嘘でしょー。

逃げようと必死でパドリングしたものの、ボードのテールを誰かが掴んでいるような力を感じた刹那、今度はボブ・サップか誰かがボードの下にいて、ひと息に高々とリフトされ、うわー、と叫ぶ間もなく、フリーフォール。続いて覆い被さってくる何十トンもの水のカタマリ。なんだこりゃ、プロレスか。もうこうなったら、頭と膝を抱え込んで、赤ん坊のポーズで身を守るしかない。のだが、底に叩きつけられる瞬間、波に巻かれたボードにリーシュを結んだ右足首がグイと引き伸ばされ、骨盤強打&股裂きを同時に受けるハメになった。痛え。海中で巻かれている間、あまりの痛さにこのまま死ぬんだと思った。ようやく水面に顔は出せたが、右の股関節から下が動かない。とにかくボードを引き寄せないと、と思っているうちに、はい次の波がドシャーン。ぐるぐるぐるぐる、ブクブクブクブク。なんとかボードの上に這い上がり、腕は無傷なのでエンヤコラとパドリングして、岸へと向かう。ははは、今日の朝ラウンド、5分で終了。


ようやく腰ぐらいの浅瀬まで来たのだが、痛くて足が着けない。びっこと言うよりはハイハイのようにしてようやく浜に上がり、倒れ込む。うわーあらためて痛ってぇー。膝まで痛てえ。でも足首は動くのでよかった、アクセル踏めるわ。サーフィンの事故で本来の目的であった(いまや心情的には主従が完全に逆転してるけど)免許が取れなくなったんじゃ元も子もないもんね。しばらく、10分くらい寝ころんでいると、次第に痛みも弱まってきて、歩いて宿舎へ帰れそうだ。しかし地元の子はすごいわ。もう直角に掘れ上がったダンパーの波でも、なんとかかんとか乗りこなすもんね。それに吹っ飛ばされても元気。俺みたいに一発でノックダウンなんてことなく、何度でも懲りずに沖へと向かっていく。痛む足を引きずって歩いていると、いつ上がったのかさっきアウトで見かけたローカルの子がこっちに来て、「足だいじょうぶ? さっき打ったんでしょ」と声を掛けてくれた。思わず泣きそうになったよ。つうか少し泣いた。<51回目>千倉、オフ、肩、大ダンパー、5分(苦笑)。


宿舎へ帰っても、痛みは一向に引かない。昼食に来たパンチ教官が小包が届いている旨、部屋まで報せにやってくる。アベくんからだ! わーい。一歩一歩痛みを噛みしめながら、それでも浮かれて事務所へ向かう。中身はあれだ、スケボーと無線LANユニット。イヤッホウ。しかしこの足じゃ乗れないな(苦笑)。AirMacカードをiBookに差して、設定アシスタントを立ち上げると、なんかここまでプロセスがブラインドになっている気持ち悪いぞ、ってほど一切の手間なしに無線LAN開通。あとはパソコン教室の方にお願いするだけだ。アラームが鳴って教習へ。オートマ体験と、これまでのおさらい。おさらいの時間では足の痛みに注意が散漫になって、クランクで縁石踏んじゃって呆れられる。何の苦労もなくできたことができなくなると、そのトラブルシューティングはなかなか面倒だ。結局何が原因か、とか一切考えないことにして気分だけでリトライしたら、いままでどおりすんなり成功。ハンコ。うーん、この痛みが仮免検定でいちばんの障害になりそうだ。

教習を終え、喜び勇んでパソコン教室へ。ところが無線LAN設置をお願いすると返事はノーで(これといった問題は生じようがないから、原因は無線という不可視のイメージ、ないしはマレビトに常時接続を解放することにまつわる何とはなしの不安感、だと思われる)、とってもガックシ。でもまあ仕方ない、回線を貸していただいているだけでもありがたいので、これからも毎日通いましょう。しかし週明けの仕事はどうしても長いグーグリングが必要とされるので、来週の休みは東京へ帰らなければならないだろう。行き帰りの費用以上に、サーフィンする時間が減るかと思うと気が重いが、仕方あるまい。その足で海をチェックに行くが、サイズは若干落ちたものの、やはり相変わらずの暴力的なダンパーっぷりで、これ以上痛めてはいよいよ今後に差し障るのため、今日はおとなしく休んでいることにする。

軽い散歩へ。スピン兄さんから、ナチュラル写真もいいけど、近所にKDDI海底ケーブルの陸揚局があるから見学に行ってみたらどうだい? という感動的なメールが届いていていざ向かうも、あえなく不審者扱いを受けて(そりゃそうだ、短パンのガキが突然重要拠点に乗り込んでくるんだから)、見学は受け付けておりません、のひとこと。くそー、KDDIの広報通して乗り込んだろか政治力行使じゃー、と一瞬思うが大人げないのでよしておく。なんだか今日はもろもろうまく行かない日だなあ、と心に曇天ムードが漂うと、おのずといったん雨が上がった空まで湿り気を孕んでくるから恨めしい。それでも浜には潮風に花が揺れ、犬を連れた子供や、東京方面から来たのであろう、ミュールを両の人差し指に引っかけては波打ち際で足を濡らすカップルなんかが散見され、ああ、ネガティヴィティの熱が空に帰っていくなあ、という妙な感覚に包まれた。晩はTさんに誘われて焼鳥屋。長い風呂に浸かってからおとなしく寝る。明日、バンテリンでも買ってこようかしら。

http://www.youtube.com/watch?v=xORTWslsGlA