現地、つまりここに入るまで知らされていなかった意外なことのひとつに、定休日というのがある。なんとこの教習所、月・火曜日とまるまるお休みなのだ。教習生の多いハイシーズン(それはすなわち学生の休みとイコールなのだが)には休日返上で教習を詰め込んでいたらしいのだが、時は折しももう4月。教官や事務員たちにしてみれば、ようやく訪れた週休2日の季節なのであった。有り体に言えば、シフト制にすりゃあいいのに完全に休むなよおかげでこっちゃ1ヶ月近くも拘束されるハメになってんだタコ、が偽らざる気持ちなのだが、そんなこといまさら言っても始まらない。というわけで完全なオフである。ははは、どうしようね。来週と再来週なんて、ゴールデンウィークを受けて月・火・水とお休みなんだぜ! イエッフー!


なんでそう休みを持て余しているのかといえば、今日はいつにも増してサーフィンに向かないコンディションなのだ。折からの小波に加えて潮回りが悪いせいで、入れる時間帯がかなり限定されそう。然して朝チェックすると、ウネリは入っているもののハイタイドで割れていない。こりゃ夕方のみだなあ、と見切りをつけて、昼はのんびり過ごすことにする。まずは、本日朝夷小のPTA集会があるため午後はお休みとなる(なんでそんな内情まで即座に話すのか。オープンマインド極まれり)パソコン教室へ。はーいメールあんがと>みんな。続いてスーパーへ行って、カゴメの野菜ジュースがないので仕方なく野菜生活100「緑王」を買う。その足でコンビニへ、ヤンマガこともなし、スピリッツは先週からSARSのおかげで20世紀少年ががぜん画的ディテール的に説得力を増している。先週の街中マスクシーンとか今週の隔離シーンとか、SARS禍なくしては描きえない、これぞまさしくリアリティ。浦沢すげえ運いいなあ。


商店街を歩いていると喪服の一団が目に入る。洋品店の主人が亡くなったようで、会館とか葬儀場を使わずその洋品店を会場として、なかなか立派な葬式を出していた。やっぱり商店主が死んだのなら、セレモアつくば、とかより故人の店を使った方が、セレモニーとして上等なのではないだろうか。しばらくすると、東京からはほぼ姿を消してしまったスタイルの文房具屋兼書店(ああでも、富ヶ谷2丁目の商店街にある書店は似た感じだ)で立ち読み。書店スペースは小さいながらなかなか健闘した品揃えで、取り次ぎ任せのおざなりな郊外型書店よりよっぽどまともな棚を構築しており、目から鱗が落ちた。こないだコラムを書いた平凡社の「東京骨董スタイル」(著者はご存知、京都/東京カフェ案内の木村衣有子女史(ボイン))が置いてあったので、ここでさりげなく宣伝してみよう。ふと思い出し、Kさんに仕事の進捗を伺う電話を入れる。


コンビニで買ったマーブルチョコを口にはじき入れつつ歩く。シンシア・スタイルだ(苦笑)。萌え、について云々すると必ず極左的な萌え排除主義者として知られる俺だが(過去にあるセクトを「萌えブロイラー」と揶揄して反感を買いまくったことがある。基本的な論拠は「萌えは共有するものじゃない」というエティックだ)、そんな俺にもキャラ萌えというのはもちろんあり、それはキンゲでいうシンシア、カウビでいうエドみたいな、総じて言えば少年的かつ抜け作な天才少女である。エドはセリフ回しかわいかったにゃあ。そんでもちろんその萌えは、征服や寵愛ではなく、同一化というベクトルで顕現する。要するに君が欲しい、ではなく「君になりたい」ってやつだ。基本的に自分のアイドル探しというのは常に同じパターンをたどっており、広末にしろごっちんにしろ、思うのはただひとつの同じこと、「君になりたい」でしかない。何の話だちくしょう。


ふたたび海を見てから宿舎に帰って、ようやくウェットスーツに。こうして文字どおり潮時を選んで海に入れるのも、東京ではなかなか難しかった贅沢といえよう。浜に出てみると、何とサーファーはゼロ。初めて入る、ひとりきりの海だ。引き続き小波だが、ところどころでテイクオフできるセットが入る。普段は疲れるしトラブルの素になりがちなので控えているのだが、他に誰もいないので、右の方が良さそうだな、と思えば右に、左の方に入ったと思えば左に、ブレイクを目指して行ったり来たりを繰り返す。今日の課題は調子に乗って、バックサイドのボトムターン。これがスケボー効果か、案外あっさりすんなりできた。まあ左右ともに、ターンと呼ぶにはあまりにお粗末なへなちょこカーブなのだが。今後は右左の区別なく、もっと深く、荷重をかけたターンを心がけたい。1時間ほどして、ロングがひとりとショートがふたり、バイトでも終えたのかローカルのサーファーがやってくる。うちショートの片っぽは昨日上がるとき会釈した子で、入ってくるとき、言葉こそ交わさなかったが、「おっ今日も入ってるんだヘナチョコ君」もしくは「波ないのによく入るねーいや俺もだけど」的な含みのある笑顔で会釈してくれた(やや妄想)。

朝から断続的に続いた雨はいよいよ完全に上がり、北のほうから晴れ間が覗きはじめる。沈みかけた夕陽がその姿を露わにした瞬間、海面はそれまでの緑青色から一転、ピンクとエメラルドを散りばめた乱反射のモザイクで覆われ、それが何かに似ているな、と思い出したらアワビの貝殻の内側だった。海で捕れるものが海そのものに似ている、すなわち自然は入れ子構造になっている、というアナロジープリニウス的なひとりごち誤解釈の典型だが、実際そうなのだから仕方あるまいよ。振り返ると背後は夕焼けによる強いコントラストの朱肉色。ここ南総の光線は狂気を孕んでいる、というより、狂気を育む。夕暮れが宵闇に姿を変えてずいぶん経ったころ、もう波頭も見えなくなってきたので上がることに。会釈の子は今日もまた、ひとりになっても波を待っている。<49回目>千倉、北弱サイド、ヒザモモ、タラタラ、3時間。

SMTP問題解決しそうですが、それよりなにより、週末までにはパソコン教室に無線LANを導入させていただくことになりそうです。厚かましいにもほどがある(笑)。
――わー先週まで合宿免許行ってたってマジで? 奇遇! アドバイス通り野菜生活飲んでます。あれなんだよね、ご飯の人はカツ丼とかトンカツとかで精一杯のおもてなしをしてるつもりなんだよね。魚なんて粗末なもんお客様に出せない、くらいに思ってる節すらあって。そこが切ないというかやりきれないところ>トビオ
――ごぶさたさん。へへへ、写真いいでしょ。ちょっとこう、絵でいい匂いさせておいて、誰か遊びにやってこないかなあ、という魂胆なんだけど。ゴスロリ問題については長くなるのでいつかまたお会いする機会があったらそのとき説明します>セラさん
――ギャワ見られてたかー。日記が長いのは単純に暮れてから暇なだけなんですよ。帰ったら飲みに行こうな話聞くぜハニー>メグキュッキュ
――君がピースフルとかゆうと、まーたイヤーなヒッピー&ボヘミアン臭漂いはじめて参るぜー(苦笑)。でもまあ、ここはイデオロギーに先行して光線と南粒子が超ピースフルな土地だよ、ほんと>ヤマグチ
――ちょっとサーフィン始めたくらいでマチズモとかミシマとかやかましいやい!>誰ともなく