昨日に引き続き教習は朝イチスタート。昨晩飲みに誘った責任めいたものでも感じてらっしゃるのか、うとうとしてたらTさんが起こしにやってきた。今日の課題は安全確認と進路変更。教官は昔都知事選かなんかに出て落っこった磯村尚徳(だっけ?うろ覚え)似のオヤジ。彼は逐一コマンドを出してはそのとおり教習生が動作するたびごく軽い性的快感を得るタイプらしく、とてもイライラさせられる。要するにあれだ、人がセカンドに入れようとすると「はいセカン!」、人が左に切ろうとした刹那「はい左いっぱい!」。いちいち行動の端緒を折られるのでモチベーションは下がるわ、常に指示に従って運転するばかりで習得したいこちらとしては身にならないわで、ここに来て初めてネガティブな印象を抱いた教習となった。あれじゃ娘が援交に走ったところで誰が彼女を責められよう(いや知らないけど・笑)。卒検で当たらないよう心から祈る。


連続で次の教習。今度の教官は、一度みっちり教え込んだあと、後半何も言わないで様子を見ているタイプ。割と好感が持てたが、やや生徒を過信しすぎる嫌いがあるかな。というのも、一度左の車庫入れで出られなくなって縁石踏んだからなんだけど。あれ、もうちょっと早く指摘してくれればなー。でもまあおかげでミスの原因は把握したので、もう失敗はすまい。このトライ&エラーまで計算づくなのだったら大したお人だ、と終わったあとで思う。ハンコ。館山の方から来ているサーファーの子とおしゃべり。ロング乗ってるんだって。若いのにもったいない。昨日の女性教官について、独身で29歳なのに彼氏が3年いないんだって、カビ(略)、なんて噂してる口調に、教育実習生に「先生彼氏いるのー」って聞いちゃう高校生っぽいあどけなさが残る。29の独身女性がいかにポピュラーな存在なのか、もうちょっとしたらわかるよ(笑)。


さて、朝の10時にして本日の予定をすべて消化してしまった。今日は日曜日でパソ教室はお休みなので、ネット接続はなし。散歩をしようにも、昨晩から降り始めた雨が降ったり止んだりで、遠出はあまり気分が乗らない。海を見に行くと、やはり小波のままだ。しかし驚くのが南房総の波の豊かさで、いくら波がないとは言っても、湘南のように完全にフラット、湖のような明鏡止水っぷりにはならず、まあテイクオフぐらいはなんとかできそうだ。体力的にも休むのが少し怖かったので、ウェットに着替えて海に出る。雨模様のせいもあって水温は昨日までよりやや低い。透明度はいつにも増して高く、水深2mくらいなら海底の石ころまで視認できるほど。

しばらくすると背後で途切れた雲間から陽が差してきて、ビーチは見たこともないような光景となった。空には鉛色の雲が垂れ込めたままなのに、海はアイスを溶かしたあとのクリームソーダみたいなエメラルドグリーン。デ・キリコ的なアンビバレンツが、180度全室オーシャンビュー(笑)で眼前に繰り広げられる。崩れた波の泡沫がグリーンの海中に混じると、辺りはさらにソーダ感を増し、白緑をこねくり回したあとのマーブル・パレットみたいだ。すげえなこんな海が、アクアライン使えば東京から2時間足らず(ハマコーしぇんしぇいのおかげ?)。サーフィンのほうはトロい波でなかなか板が滑り出してくれず、妙に体力を吸い取られていく感じでややフラストレーション。

昼食を摂りに宿舎へ戻る。あれはなんといえばいいのだろう、蕎麦笊に乗ったソーメン、のようなもの。だってあれ蕎麦にしては真っ白すぎるし、ソーメンにしては太すぎる。あまり地方の乾麺に詳しくないのでコメントは差し控えておこう。あとおいなりさん。食事の世話をしてくれる近所の食堂の方がいたので、主食の量を減らしてもらうようお願いしておいた。「サーフィンやってんだから減んだろ、腹」って、いや無理ですってば。部屋に戻って午睡をとり、暇なのでノートン先生とかデフラグとかかけたりしていると、週に1度掃除に来ているという近所のばあちゃんがやってきた。赤ん坊を背負っているのでお孫さんですか? と聞くと、教習生の子供を預かっているのだという。はあ、託児所まで兼ねてるですか。お父さんだよー、とか適当なことを言って笑う。娯楽室の畳でストレッチをしたあと、ふたたび海へ。乾ききらないウェットスーツは、それはもうとてもとても袖を通しづらい。


入っているのは7、8人。またもぽつりぽつり帰りだして、すぐに4人まで減ってしまった。上手な人は比較的波の良い日にしか入らないのだろう、他の面々もエキスパートとはほど遠く、全体に教習所と同じ雰囲気というか、ニュービー牧場といった感じだ。このくらいの人数だと今日のような小波でも、セットを待って、2、3本のセットをなんとはなしに順繰りでシェアして、また沖へ戻り、呼吸が整ったところでまたセット、という非常にピースフルかつ理想的なペースのローテーションが自然発生し、とても穏やかにサーフィンしていられる。おしまいには俺と似たくらいの初心者さんとふたりきりになってしまい、お互いやや意識しながら練習に励む。暗くなって波がよく見えなくなってきたくらいに切り上げて、もひとりの子に軽く会釈をして上がる。そろそろサイズが上がってきてほしいかな。<48回目>千倉、ほぼ無風、トロ厚、モモ、昼2+夕1.5時間。

しかしこうも宿から海が近く、時間も自由に使え、気軽に海へ行ける状況下に置かれると、サーフィンの習熟度も気概も東京にいるのとはまったく違ったものに変容してきている。わざわざ出かけると、バテバテなのにせっかく来たのだから、と依怙地になって4時間とか粘りがちだが、ここにいると、疲労がきてパドリングのフォームが乱れはじめたらもう上がっちゃおうかな、という気になる。それに海に入っていること、波に乗っていることの希少性が小さいため、力みや硬さも少し抜けたように思うし、気負いが減れば意外と動作がすんなりいくもんだ。なにより中5日とか空けてしまうと最初の1時間は感覚を取り戻したり前回のおさらいに割かざるをえなかったのだが、このペースで入っていればそんなこともない。まだ4日目だが、すでに東京にいる1ヶ月ぶんくらいは上達したんじゃないかしら(4日×朝夕=4週間×土日)。いいなあ、そりゃ上手いわけだよローカルさんたちは。