めずらしくタバタに起こされる(普段は逆)。ようやっと土曜日。海行きだ。各所を見て回るが、どうしたことか、波はやや乱れているものの、それなりにサイズがあるのに浜辺に人影がさっぱり見かけられない。一宮で4、5人、東浪見で2人、サンライズに至っては、何か悪いまじないでも掛けられているのだろうか、ゼロ。プライベート・ビーチ状態である。確かに雨だしいったん温んだ水温が急激に冷え込んで、我さきにと海に飛び込むような日和ではないのだが、それにしても。答えはウェットに着替えて海に入ってみればすぐにわかった。見かけの何倍もジャンキーな波なのだ。まだ半年しか海を見ていない俺らには、サイズは腰くらいしかないのにクローズアウト、という状態を理解することができなかった。

まず流れが凄くて、左から右へ、10分で100メートルくらい流されてしまう。そして波は右から左からメタメタに割れてきて、波乗りどころかアウトにも出られやしない。なるほど誰も入っていないはずだ。たまらずすぐに上がって、作戦会議。この状況を引き起こしているのがいま吹いている強い北東風だとすれば、この風をかわせる場所なら入れるかもしれない。選択肢はふたつ。ビーチの方位が変わる南房総まで下るか、巨大な堤防が北風を遮る片貝漁港脇まで上るか。でもすでに濡れたウェットに身を包んでいるので、この格好のまま南房総までドライブするのは現実的ではない。というわけで、車のシートにバスタオルを敷き、ウェットスーツのまま九十九里有料道路をぶっ飛ばす。タバタは上半身裸。しかして読みが当たった。到着した片貝では、サイズは大きくないもののマシな海面、そして同じ目論見で集まったサーファーがわんさかと。みんなここにいたのねー、って感じ。

もちろん堤防ごときで風波を完全に回避しきれるわけもなく、右へ左へドンブラコとボードがよれ、それだけで整っているときの倍近いペースで疲れていく。しかし携帯の波情報に頼らず(なにしろ情報では東浪見goodだったのだから信用ならない。サイバードざけんな)、たった半年ながら蓄積した情報でいい条件を探せたことにハイになっていて、がむしゃらにアウトを目指す。傾斜の緩い小波とドシャーンと崩れる大波のどちらかに極端に振られていて難儀したが、なんとかうまいバランスの波を拾って、数本いい感じで乗れた。いちばん沖目に、真っ黒な江頭風ウェットスーツに無精ヒゲ・薄毛の、ちょっとくたびれた年輩の人がいたのだが、あれは元プロか何かだろうか、そのときアウトにいた他の誰もかなわないような異次元なライディングを繰り広げていて度肝を抜かれた。めちゃくちゃ格好良かったわ。思わずボーっと見つめてしまってセットのスープに吹っ飛ばされたほど。

いいかげん疲れてきたので上がって駐車場へ行くと、タバタがスケボーで遊んでいた。先週俺が買ったCarverの40インチなんだけど、ちょっとデカすぎるんでお譲りすることにしたのだ。しかし彼はなにをやらせても類い希なるコミカルな所作を発揮してくれるので(デミと張ると思う)、もう見ていておかしいやら恥ずかしいやら、否が応でも目立つから、ローカルのちょっと悪い子にシメられたりしても俺は知らない(笑)。いつも作田に入ってるキシケンさんも片貝に来ていたようで、久々にお見かけしたが、やっぱりタバタを指さして笑っていた。いるだけでみんなをニコニコさせるのだから、たいへんな才能だ。もうスケボーは彼のものになってしまったので、俺は新しいやつを探さなければならない。Sector9のCR-1かFlexdexのK-carverか、もしくは普通のスケボーにGravytyのスラスターシステムを付けるか、迷う。<35回目>片貝漁港脇、強サイドオン、腹ムネ、チョッピー厚め、10分+3時間。

帰ってきてビデオ2本。瀧ちゃんの赤ちゃん教育(トチ狂った女の子にカタブツが翻弄されちゃう系スクリューボール・コメディ大傑作。手加減なしのパラノイア的勢い。女優も脚本もテンポもすごいのだが、いちばん凄いのは豹)、あとAさんのベティ・ブルー。ベティ・ブルーを見て思い出すというのも酷すぎる話なのだが、今日は3月15日だったね。なんかのシンクロニシティだろうか(苦笑)。たぶん俺ばかりでなくみんなにとっても多くの恋愛は破滅に向かうか慣れに向かうか、盛り上がって死に急ぐか盛り下がって生き延びるかだったけど、いま現在の俺はそのどちらにも興味を持てない。恋情と生命はトレードオフの関係にばかりあるわけじゃない気がしている。恋愛に関して俺はまったくの子供だ。大人になりましょう。