■

こないだシイナにビデオデッキをもらったので、散歩ついでに近所のレンタルビデオ屋に５年目にして初めて足を踏み入れてみたが、まったく食指が動かないまま一周して出てきた。部屋で映画のパッケージソフトを観る、しかも所有はできない。という行為の礼儀作法がまったくイメージできないのだ。レンタルビデオは難しい。84年くらいの若者は、どんなマナーを編み出してカウチポテトの時代に備えたのだろう。あの店を自宅の冷蔵庫とでも思えばいいのだろうか。

12/29の日記でこう書いたのだが、一昨日、ついに、とうとう、ムスリムに改宗するような心持ちで近所（麻布シネマという）とツタヤの会員証を作ってきた。どんな未開人がこの日記を書いていたんだと驚かれるかもしれないが、これが正真正銘、俺史上初めてのレンタルビデオ体験ということになる。さようなら、非レンタルビデオ会員の俺。こんにちは、ビデオ借り放題の毎日。さあたいへんだ。ツタヤのあのビル丸ごとが未見の山。手に取るものすべてがマスターピース。これがファンクなら、スライのフレッシュも、グラハム・セントラル・ステーションのリリース・ユアセルフも、パーラメントのマザーシップ・コネクションも聞いたことない坊主がフラッシュ・ディスク・ランチに入ってきたって体だ。これがハウスならラリー・レ（略）。

いやほんとに人に話すと驚かれるんだけど、俺、異様に映画を観た経験が乏しいのね。なにしろその98％が映画館だし、それだってかなり腰が重い方。世に存在した映画の数を思えば俺が観た数なんて、そうだなー、地球をこの丸だとすると、エベレストの高さはこの鉛筆の輪郭線に収まっちゃうんだ、ってたとえ話にも足りないくらいだ。シネフィルばっかの（俺から見りゃ誰だってそう見えるんだ）ネット界隈で、よく息をして暮らしてこれたもんだよ。厚顔無恥にも程がある（笑）。そんなわけだからもう、レンタル屋の棚を前にするとさ、どれから手を付けたらいいもんだか、目眩とくしゃみと便意で体温が３度上昇するほどで。だからこれまで一切手を付けてなかったわけだけれども。でもそれももうおしまい。

ってなわけで、ここを読んでくださっているみなさんに、まず俺が手に取るべき100本の道案内をお願いします。掲示板を作りました。「セレクトは常に教条的に。あなたは面倒見のよい歳の離れた兄弟か、もしくは休日になるとひょっこり顔を出す何の仕事をしているのかよくわからないけど話の面白い伯父さんで、私はダイ・ハードしか観たことのない12歳の子供です。私は基本的にここでのリコメンドに忠実に従ってツタヤにオーダーするでしょう。すでに観ている場合はその旨レスします。投稿タイトルに映画名を。コメントは任せます」という長いコメントも付けました（笑）。お一方で何本書かれても構いません。ほんとに信頼して借りて、俺の人生の何万分の一だかの時間をあなたのリコメンドに捧げるので、えーと、心して書いてください（笑）。つまんなくても怒ったりしないけど、それが教育的な体験であればいいな、と思います。

ちなみにきょう電話したリョウタさんのリコメンドはこう。暗殺の森および暗殺のオペラ／ベルトルッチ、カップルズ／エドワード・ヤン、そしてフェリーニのアマルコルド。現状、俺にこの文字列がどんな意味を従えているのかなんて知るよしもないけど、たぶん何らかの的を射てるんじゃないかと思う（何らかの・笑）。ルノワールは？　って聞いたらまだ薦められないって。ふーん。今日は手元にゴーストワールドとマグノリアとアニー・ホールがあるから（笑・な、俺に任せといたらしっちゃかめっちゃかになりそうでしょ？　あなたの力が必要なんですよ）あさって借りに行こう。睡眠時間削れば１日３本は見られるんじゃないかな。「１年後には小うるさい蓮實信者のシネフィルになってたりして」とは瀧坂の弁。でもいきなりアレクサンドル・アレクセイエフのピンスクリーンを推すのもどうかと思うぞ。いやツタヤにあれば借りて見るけど。

今日は一日仕事。海外メールは英語のできない俺にとってさえ日本人にビジネスメール出すよりよっぽど気楽でいい。用件さえ書いとけばちゃんと返ってくるんだもの。いや相手は気分害してるのかもしれないけどさ。お世話になっておりますこの度は〜とか書かなくて済むだけでかなり負担が軽い。晩にオータとキヨコとゴセッキーが飯を届けにきてくれる。スケボー30分（コンビニ１、レンタルビデオ１、古今１）、オーリーなんて当面無理だけど、家出て左の坂、半分くらいまでならスラロームして下れるようになった。内股の筋が痛い。という話をゴセッキーにしようと思ったら奴曰く、「俺スケボーめちゃくちゃうまいよ、スポンサー付いてたもん」。腐れボンボンめ！　明日は自分史-R/RWという話をします。とりあえずみんな掲示板よろしくねー。