11/15〜17
15日は1日原稿書き。胸くそ悪くなることがあって憤怒の表情を浮かべている最中に、MCのKさんとMEのTさんから、ともに最高に皮肉と愛情の効いた文章が添えられたバイク便が届いたので、隣人が訝しがるくらい大声で笑ってたらスッキリしちゃって作業続行。編集という仕事は、スキルの巧拙や善悪や粋無粋ではない部分に負うところが大きくて、とても僕なんかには務まらないといつも思う。

晩に簡さんところの手伝い。追い込み。翌朝の12時まで根を詰めて完パケ。しばらくの間、古今からは遠ざかろうと思う。簡単に言えば、学生時代についぞ持ち得なかった部室感をいまさら手に入れてみて喜んだところで僕はちっとも救われやしないし、そんなことに魂を明け渡せるほど許されちゃいない、ということだ。

そんなわけで16日は目覚めたら暮れかけで、きのう散歩をさぼった埋め合わせに落ち葉を踏み鳴らしながらジャリを走らせ、てるところで愕然とする。リョウタさんから借りた1万の残りの6000円を、またもや落としていたのだよわーっはっっはははははは。もちろん家にも古今にもなく、原因はフリースのポケットがだらしない付き方をしている(ジッパーが下からに上閉める、のではなく上から下に閉まる、アウトドア業界でいうところのハンドウォーマー)せいなのだが、そんなことがわかったところであさってまで通帳じゃ下ろせないし、この寂寥感のトリプル役満(週末、起きたら暮れてる、文無し)は拭いようもない。

古今に置き忘れたiBookを取りに山手通りをとぼとぼ歩いていたらリョウタさんから電話がかかってきて現状を話すと、「それが30代。30代はあらゆる人に平等に降り注ぐ」とかゆわれて路肩で爆笑。イギリスではセカンド・サマー・オブ・ラブの後遺症でサイフを何度も無くした果てにサイフを持たなくなる30代ホワイトカラーが急増、皮革業界は頭を悩ませている。という半分デマゴギーのトピックについて文章を書いてみたんだけどとても載せられたものではなくなってしまった。帰ってきたら、ここ数日ふたたびむずがっているハードディスク様がまたもやうんともすんとも言わなくなっていて、なんというかまあ、30代の笑いを僕は知った。

きょう17日は波もないしサーフィン見送って朝から原稿書き、のつもりが、目覚めてみたら金はねえわMacは起動しないわ、完全に出鼻を挫かれた。要するに僕は一度寝るとすべてのトラブルは夢で起きたできごとだった、ああ朝が来てよかったオールクリア! と思うたちで、もちろん現実にはそんなこたあなくてゴッタゴタ。復旧作業の途中でご来客にコロッケをいただいたり昼寝したりしたので体調はすこぶる良い。これからいつまた止まるとも知れぬハードディスク様(わかっているだろうが、換装する金は明日の10時、あれ銀行9時? まあいいや朝、までない)に向かって原稿を書く。そういやなんか最近原稿の仕事が多いな。まるでライターみたいじゃないか(笑)。はーっははははははは、はあ。諦めよう。

おとうさん。ドラマはどうでもいいのだが、さっき映ったカラオケボックスのシーンが凄まじかった。中谷美紀が五輪マユミを唄い、フカキョンヒロスエがパフィをデュエットする。テレビに出てくるカラオケボックスは、たいていの場合カメラの引きの都合で無闇に広く、そして寒々しい(これはTBSの道具屋だから)。趣味の悪い、道具屋が「これとか場末のカラオケボックスっぽくないっすか?」とかなんとか選んで張ったんであろう、パステルカラーの壁紙(現実にはあんなカラオケボックス5年前に絶滅している)。その中で、今、ああなんてこった、ヒロスエ中谷美紀がマイクを持ち、こともあろうにハッピーサマーウェディングを唄っている。もはやフカキョンはスタッフが扮した着ぐるみのクマちゃんとしか思えず、飯島直子は壁のパステルカラーに溶け込んで見えなくなってしまった。

通信カラオケの安っちいリバーブで、ユニゾンの危なっかしいピッチがさらに浮き立つ。それも、中谷の異様に正確なピッチはもはやカラオケの歌をリードするデジタル音にしか聞こえず、下では上ずり、上ではフラットし、手振りとともにアウトするヒロスエの声だけが、リード音に対してコーラス効果、というよりフランジャーがかかったみたいに耳を支配するのだ。凄い。ヒロスエは凄いという以外にないから凄いと書く。人は巧拙や善悪や粋無粋(それぞれフカキョン飯島直子中谷美紀)では裁かれないんだなあ、とつくづく思う。この点においてヒロスエは常にキングだ。いや女だからクイーンなんだけど、まあとにかく、キングで常勝。千代の富士。仕事に戻ろう。