文字どおりの泣き寝入りのあと、タモ過ぎに目覚める。ショックの余震を振り払って、再びもろもろリカバリ作業にトライするもどうにもならず。こないだ買ったばかりのハードディスクだったのでお店に泣きついて断られたら文句のひとつでも言ってやろうかしら、と販売店に電話。お力になれるかわからないですが持ってきていただければ様子を見ましょう、との返事で、チャリを漕いで新宿のパワーラボへ向かう。全身がこわばりつつぐったりしていて、坂道が異様にきつい。

物理的には問題なさそうですね、ということでDisk Warriorをかけてもらう。異様に時間が掛かったものの、なんとかディレクトリの再構築に成功。20時間ぶりにメインのパーティションがマウントされる姿に安堵のタメイキを漏らす。ありがとうございました。帰宅。ところがそうあっさりは行かないもので、ファイルの大半が破損しており、finderからは姿さえ見えない。開けるフォルダ開けるフォルダみんな空っぽ、って図を想像してもらいたんだけど。ほら、家に帰ったら同棲中の彼女もろとも家財道具一式消失、みたいな。今日はやけに風が吹き抜けるなあ。ヒューララ。

消失したファイルのうち、ユードラの受信簿と送信簿、直近の仕事のファイル、あと仕事の名刺を打ち込んだファイルメーカーの住所録だけはなんとしても回復させなければ、精神的な被害を経済的な被害が超えそうだ。えんえん消失ファイルの断片を検索して回る。あの、みなさんご存じだとは思いますが、ゴミ箱で消しちゃったファイルでも一部を生き返らせることはできるわけで、でもエラい手間がかかるわけで、業者に頼むと10万単位のお金を取られるわけですけど、それを一日中やっていた。正直に言って、このクラッシュによって何が失われ、何が残ったのか、現時点ではまったく把握できない。もしかしたら何も失っていないのかもしれないし、もしかしたら予想外に後遺症が残るかもしれない。

結局、重要なファイル、つまり僕が作ったオリジン弁当のほとんどは帰ってこなかった。メールボックスも、ほとんど。僕のブラウザを使ったことある人はみんな目を剥く、スクロール長5メートルに及ぶいつか整理しようと思っていたブックマークも、僕のへんてこな言葉づかいが乗り移ったATOKの辞書も、デスクトップを埋めるスティッキーズの走り書き、こまぎれの音楽、こまぎれの文章、懐かしいシユシミのログ、懐かしいデジカメ画像、さようなら、さようなら。ざまあみろ、くそったれめ。ああ、ハードディスクの奥底に眠っていたfranny's diary(追記:タレコミによると同名異サイトが複数存在するらしい。もちろん他のどれでもなく、あれです。そもそもこんな看板背負って許されるのは他にないだろう)のログだけはなぜか残っていた(宝物だ・苦笑)。

間違いなく言えるのは、これは現代、幾重にも安全ベルトが張り巡らされた現代に残された一種の天災で、無力、という言葉の意味を教えてくれるファッキンなギフトであることだ。前に逆シャアで堕ちゆくアクシズを眺める人々、もしくは津波が来ても逃げない人たち、という話を少ししたけど、クラッシュしたハードディスクを前に、僕らは諦念を知る。クラッシュして身軽になったかも、これって荷物が多くなってますよって神様からのお告げ? ひょっとして最終的には良かったってこと?、なんてことは言わない。それほど楽天バカな悟りっ子クラブじゃないよ。そんなのスピリチュアルとか口にする奴等に任しとけ。けど、間違いなくどうしようもないことだけは、間違いない。

晩に瀧坂とリョウタさんが遊びに来て、環境復帰を中断してマリオカート大会。ちらっと飲みに出る。世はこともなし。次にディスククラッシュに遭遇したとき、僕は何を喪失するのだろう。そんなことより、続けざまにやってきた災難がこれで終わるとは思えない。さて、今度はなにをやらかしてくれるのやら。とりあえずお茶でも飲もう。