生まれて初めて、ゴルフ中継を18ホール通して見る。全英オープン。丸山がトップグループにいるってんで盛り上がってたんだけど、そんなことよりこれはすごいヒーリングムービーだね。延々空と植物を映してるの。中継は、その存在の是非を問う声は多いけど間違いなくコンサバの極みであり、競馬の杉本、アタック25児玉清ジェットストリーム城達也らと並んで、いつ見てもまったくブレのない退屈なほどの安定を誇る戸張捷(漢字わからん)だ。レポーターに青木功、ゲストに北野武

初めて認識したんだけど、青木功っていうのはなんていうか、猪木、長嶋系列のパーソナリティなのな。今日はビートたけしさんではなく北野武カントクとしておいでいただきました、って紹介の直後に、ビートちゃん、って何度も呼びかけたり、Levetってフランス人をレベットレベットって連呼して、戸張がそのたびにこそっとレヴェって言ってみせるけどおかまいなし、とか。

極めつけは丸山の優勝が消えてゲスト陣に弛緩がもたらされ、しかしゲームはクライマックスを迎えたところで「もういてもたってもいられねえ」ってスタジオを飛び出してホールにかけていく姿。あとでスタッフによりマイクが手渡されスタジオとの会話になるも、すでに浸透したリラクシンの空気に戸張も完全に防御を解いてしまい、中継システムをトランシーバー代わりに、えらいフランクな会話が垂れ流される。

「青木さんいまどこ歩いてるんすか」
「18番フェアウェイのど真ん中。優勝者みてえに歩いてる」
「気持ちいいでしょ」
「きーもちいーなー。しゃべんねえぞ、もう」
「あいよ」

画面にはイネ科の雑草が少し金属質なスコットランドの青空をバックにえんえん映し出されている。遠くには海風に乗ってホバリングしてるカモメ。プレイヤーは雑草地帯に落ちちゃったボールを前に、こまった顔をしながら、それでも優勝へ向かってコンセントレーションを高めてる。うろ覚えだけど、このあとその人どんどん自滅していくんだけれども。映っている要素だけを取り出せば、こりゃどっちかっていうと乙女の領域のできごとだ。そんでオヤジがえらいのびのびしてる。ゴルフは、ちょっとあれはいいぞ。