恵比寿にハワイアンのライブを見に行く。アートフォームとして閉じた系の中でプレイに興じる楽しみはわからなくはないんだけど、どうも小僧っ気が邪魔して受け入れがたかったジャンルのひとつ。カルチャー・スクール的、とでも言えばいいのか。でも行ってみれば十分エキサイティングで、安定した土壌で演者が育まれることの豊穣さを知る。スライドギターのピースフル・ヴァイヴに包まれて、ここ最近体験したことのない深い眠りに。曲間で音が途絶えるとふっと目覚め、フラの女の子の神々しい皮下脂肪をひとしきり眺めて、ふたたび眠りの底へ。あの楽器キケン。

パードン木村さんのことを思い出す。こんなところに書くのはもったいないほどの大事な記憶なんだけど、年越しに図々しくもパードンさんのお宅にお邪魔したときに、僕が防音してなくて苦情とか言われないんですか? なんてどうしようもなくしみったれたことを聴いたら、「うん、僕はもう大きな音出すこともないから、大丈夫」っておっしゃって、その言葉と声の調子とキケンなほど透明な瞳に僕は気絶しそうになった。僕みたいな小猿がどうこう言えるフェイズのことじゃないけど、泰然とかって言葉はこういう人に宿るのかもしれないし、でもこういう人はそんな言葉好きじゃないのかもしれいないな、と思った。パードンさんの音楽はハワイを感じさせるサウンドを含んでいるけど、ハワイアンなんてやらない。