被るぜバッドスタッフ

タモ起きる。まだ帰ってない。itpで新宿近くのバイク屋を検索。どうしても土地の高いエリアにはバイク屋みたいな収益率の悪い業種は少ない。きのう置いてきた場所から徒歩圏内では、ボッタクリホノラリーしか見つからず往生する。

高校生の頃に2台買った阿佐ヶ谷のバイク屋に電話。メカニックの小林くんが優しくて、困ったときにはいつでもピックアップしてくれるんで今回も甘えちゃおうかな。と思ってたのに出たのはご主人。小林くん、ケンカして辞めちゃったんだって。なんともはや。

しかたないのでいちばん近い初台の哲輪とかいうバイク屋に電話。ぐうたら営業が多いバイク屋にあって、日曜開いててよかった。身支度を整えて新宿へ。まだ帰らない。

ヒルトンの前から山手通りまでとぼとぼ押して歩く。動かないバイクを押しているときって、どうしてこうまで切ない気持ちになってくるんだろう。ガス欠、焼き付き、はたまた事故ったとき。重くなってくる腕と暮れゆく空。いい加減しびれを切らして携帯に電話するもずっと留守電で心細さエスカレート。

とりあえずバイク屋が引き受けてくれてよかった。こんだけ古いといやがる店も多いので。バスで八幡まで戻って帰宅。まだ帰ってない。ここ2カ月くらいに起きたとてつもなく嫌なことの数々が頭をよぎる。うー。メソ寝。

2時間くらい寝込んだあと、電話のベルで目を覚ます。バイク屋から。割と軽傷だったようでホッとする。キーボックス、アッセンで交換ともなると今月もうレコード買えないとこだった。ふたたびバス。怖い考えを振り切るように、バス停まで意味なく走り出す。ここんとこ走ってばっかりだ。くそう。

バイク屋でべらぼうな工賃に息を呑んだ瞬間、携帯が鳴る。「いま渋谷でー」。んー、この請求、君行きに決定な。2ストオイルを足して、もうすっかり暮れ切った山手通りをわが家へ。ふーん、帰ってくるんだ。ふーん。

それでも2日ぶりに帰ってきた恋人をスマートに迎え入れるには経験値が足りないらしく、やや、いやかなりぎこちない会話とスネっぷりを露呈しつつ食事。僕たちの暮らしは、624とおりの不幸せのシナリオを払いのけて探し当てた、ただひとつのマス目にしか宿らない希有な希有な幸せなんだよ。きょうは心配し疲れた。もう寝る。ぐう。