無題

ひどい雨。雑事をこなしていると突然「ソイヤ!」の声。傘を手に見に行くと、男衆がお世辞にも立派とはいえない御輿をかついでいる。いちだんと強くなった雨の中、なにか異様な熱が立ちのぼって湯気のようなもやが見える。やけくそパワー?

「舟は往く」3題。ギャッツビー、黒い時計の旅、夢が夢なら。

夜半、雨が上がったので上原のアブラバーまで散歩。人っ子ひとりいない濡れた路面に、点けっぱなしにされたお祭りの提灯の灯かりが遠くまで連なる。クツワムシのような荒くれが出てくるにはまだ早く、清らな虫の音。それも雨のせいか消え入るようにか細くて。清順か鏡花か。

アブラは相変わらず素晴らしい。WARのベスト(?)アルバム。やや叙情的なきらいがあって突っ込まなかったWARだが、この年になると聞き方も変わる。突っかかって手ごたえを確かめるのではなく、身を預けるようにサウンドに包まれる。このまま音の渦の中に溶けてなくなってしまいたい。バターになった虎は幸福な夢を見たか。

夜明け前、容赦ない雷。今年は夜の雷の多い年。低くとどろく雷鳴から闇空を切り裂く稲光まで、夜鳴る雷はひとしく切なく、もの哀しい。それは月の裏側から低気圧の裂け目に洩れ響いてしまった死者たちの声。なにももたらさず、なにも求めない。誰に聞かれるともなく消えていくはずだったその音に耳をかたむけ、ただ無に帰していくものたちのことを思う。