午前リンカーンPI、バッハつづき。午後スムースジャズ。よくわかんないけど見学の学生集団が入ってきて、ちょっとこうフンッっていうか、バークリーならこんくらいは弾けるんでしょ、みたいな感じのムードを感じてしまって、ちょっとやりづらかった。前回に引き続きスコットが持ってくる譜面はぜんぶ面白い。有名曲のくそリハモかかったシートとかを持ってくる。おれはベースだから気が楽だけど、ギタリストふたりは死んでた。ハイブリッド/ポリコードの上だけ弾いてればいいのに、ぜんぶ律儀にボイシングしようとするからだよ。

ちょっとウワッて思うことがあったんで書き留めておきます。こないだ、とある曲をコピーすることになって、その原曲を弾いてるのがちゃんとした教育を受けていない人なのね、だからテンションの積みがトリッキーというか有り体に言えば理論的には間違っていて、けどおれはそこのところがカッコいいというか、何ならその曲のかっこよさの核心はその外れたところにあると感じたのね。だけど一緒にやることになったピアノの子はちゃんと理屈がインストールされてる子だから、そこを正しい音使いで弾いちゃう。

それで「そこのところ、理論的にはその音で正しいけど、聴こえてる音は違うよ」って口を出したんだけど、でもその子は「そんなわけないでしょ、こうだよ」って正しく弾いてくるわけ。そんで「よく聴いてみて」って何度もプレイバックするんだけど、やっぱり「おれの弾いてるので合ってる」って。それで割としつこくやりとりしたんだけど、何度目かで「あ、これ意地張ってるんじゃなくて本気だ」って気づいたの。

つまり、これはおれの想像だけど、その子のすっかり正しい理論がインストールされた耳には、その外れた音が本気で聴覚的に聞こえなくなってるんだよ、たぶん。視覚に置き換えてみると「そこにあるわけがないから本当はあるんだけど見えてない」ことって、まま起こりえると思うんだよね。それの聴覚版かな、って思った。だからそこでおれは自分の意見を引っ込めたんだけど。ちょっと怖いな、と思ったし、自分もそこそこには理屈がインストールされてるので、意識的に耳をオープンに調整しておかないとマズいわって思った。

よく無駄にリハモしたりキメ作ったり調性薄めたり、楽曲の難易度をむやみに上げてしまうのがバークリー病なんて呼ばれたりするけど、ほんとのバークリー病ってあるとしたらひょっとしてこういう認知の問題なんじゃないかなって思った。どっとはらい