きょうは珍しくリンカーン先生がお休み、ヨーロッパツアーだって。ミシェル・カミロの仕事かな。プレイヤーの先生は常にこの休講問題があって、売れっ子の先生に習いたいけど、売れっ子ほど授業をキャンセルされがち、というダブルバインドが常につきまとう。たとえばエスペランサなんかバークリーの先生としては評価が低かったらしく、それは売れっ子すぎてぜんぜんボストンにいられなくて、結局休んだぶんどっかでまとめて週に2回とか3回とか埋め合わせされるので、レクチャーのペースがボロボロになっちゃうことに原因がある。かといってまったくミュージシャンとしてモテてない先生も魅力がないし、リンカーン先生はその辺ちょうどいいバランスなので最高。

ムーブメントは引き続きヨガとプレゼン。トランペットプレイヤーの子が見せてくれたbreathing gym という、管楽器プレイヤーのための呼吸トレーニングが面白かった。管楽器の呼吸は単に肺活量が大きくてもダメで(もちろん大きいに越したことはないけど)、楽器を演奏するのに最適化された息の長さと制御力がないといけないんだけど、そのあたり私がブラバンにいた30年前(30年前!)とは大違いで、めちゃくちゃ具体的かつ実践的なメソッドが確立しているのがわかったし、肺活量トレーニングも筋トレみたいに近代化してるんだなーって思った。

午後に対位法。遅刻して行ったんだけど転調の習作がよく書けていると褒められた。授業はカノン。カノン、譜面見るとアホみたいだけど書いてみると先読みが求められるので難しい。晩に楽しみにしていたディアントニ・パークスに行った。ハコのサイトに住所はマサチューセッツアベニュー480番地って書いてあって、googleマップ見たらウォリーズのそばなので近所じゃんとと思ってチャリで行ったら、ただの民家で、建物の周りをぐるっと回ってみても民家で、いくら地図と照らし合わせても民家なのだった。よくよくよくよく確認してみると、Oh...「ケンブリッジ市」マスアベ480。隣の市の同じ番地! トラップすぎた。

1時間半遅れで到着してみると、それでもまだ始まってすらいなくて、いつもはイライラするルーズな開演時間に感謝した。レオ、プラナフ、アレックスら、めずらしくバークリー生に何人も会う。ぜんぜん知らない子に「お前バークリー生だろ、歩道を走ってんの見たことある」って言われてすごい恥ずかしかった。そりゃいつも遅刻ギリで走ってますけど! そうして始まったディアントニ・パークスは、キック・スネア・ハットのみのドラムセット、右側の机にはラップトップ、MIDIキーボード(ArturiaのMiniLab)、インターフェイス(Appolo Twin Duo)だけ。シンプル!右手でサンプルを叩きながら左手でドラムを叩くスタイルなんだけど、まあ動画見たほうが早いか。見てみてください

見りゃわかるけどグリッチ感覚とヨレたビートが持ち味の人で、それは動画見て知ってたけど、やっぱり最前列の音響で聴くと興奮度合いが全然違うのだった。ぜんぜん関係ないけどサンドウィッチマンのコントのフリで伊達ちゃんが「〜〜って興奮するよな」「興奮してきたな」って言うのすごく好きです。究極的に言えばわれわれがメシ食うのも音楽を聴いたり奏でたりするのも家具を選んだり椅子に座ったりするのも、すべて神経回路を興奮させるためにやっている(発露の仕方はブチ上がりから静かなチルまでバリエーションこそあれど)。だからあのフリは普遍性を最大に確保している時点でいつも正しい。