ふと会話のなかで「去年はどんな年でした?」と聞かれて、返答に詰まるも、考えるだけ考えるに、答えは浮かんだ。しかしその場では言わなかった。

去年はどんな年だったか。答えるならば、靴を揃えた年でしたということになる。服を脱ぎ散らかすのと靴を脱ぎ転がすのが私の悪癖のひとつなのだが、昨年一年を通じて、とにかく靴を揃えられる人間になろうと心がけ、ついに、靴を揃えて脱ぐという習慣を身に着けることに、ほぼ、成功したのである。

誰が聞いてもひどくつまらない話なのだが、これが自分にとっては存外おおごとで、しかしなぜこれが、どのくらいのおおごとかというのは、どうにも他人に説明しづらい。少なくともバンジージャンプとかスカイダイビングみたいな、たいへんに派手は派手だがその場の思いきりひとつで済んでしまうタイプのものごとに、私はもう興味があまり持てないのである。興味というか、価値付けが。