えー哲学の言葉では「非連続性」と申しまして、当然ながら私とあなたはひとつながりではない存在です。私が死んでもあなたは生き続けるし、あなたがいくら悲しもうが、その悲しみは私には想像することしかできません。私の行きつけの歯医者お得意のセリフがありまして、「痛いですか?(痛い痛い痛い!)ハハハ、俺は痛くな〜い」口に出すと人でなしですね。

それだけに人間は、古くから「連続性」に恋い焦がれてきました。酒を飲んでは酩酊を要求しあい、セックスをしては入ってるねと確認しあい、死ぬと決めれば心中し、フィクションを書いては人類補完計画、歌えば♪あのとき同じ花を見て美しいと言った2人の(古いw)といった具合。しかしすべては幻想です。この世に生を受けた以上、我々は非連続的な存在としてその生をまっとうするのです。

なんですけど、今朝ジャリの爪切りに行きまして、犬の爪というのは先端付近まで血管が通った、何に似てると言えばいいのかなー。とんがりコーン? とにかくその血管には神経が通ってるから痛いので、ギリギリを攻めて切っていくんですが、ちょっと今月伸びすぎちゃって、そうすると適正な長さまで切ると血管ごと切ることになるわけです。切る、痛い、ギャンと吠える。またバチン、痛い、ギャンと吠える。

普段はその様子を見ていても、まあスマンなー痛かろうすぐ終わるのでなー許せーくらいにしか思っていなかったのですが(というかそう思っていないと見てられない)、なんでか今日はダメでしてね、見てるうちに胸のあたりがモヤモヤと怪しくなり、同時に脳に痛みの感覚が流れ込んできて、みるみる気分が悪くなってしまい、顔面蒼白、へたりこんでしまい気を失いかけたのだった。

なにが非連続性だ、たかだか12年過ごした犬ころの、痛みが伝染して貧血起こすとは焼きが回ったか、と驚いたのですが、えー世にこれを「共感」と申しまして、センチメンタル孤独おじさんことワタクシ、齢39にして初めて、他者に対して共感というものを抱いたのでありました。びっくりした。これが本日遅刻した理由の全貌であります。