震災は貧困問題に移行しつつある(前)

4月3日、縁あって気仙沼に物資を届けに行ってきた。事実関係は別の場所に譲るとして、ここでは被災後3週間を経た現場を見て、感じたことを書き連ねてみたい。なお以下は私が実際に観察してきた気仙沼市内についての記述であり、他地域はこの限りではない。

1:被災レベルの濃淡
被災地を訪れてまず最初に驚かされたのが、被災レベルの強いコントラストである。全壊地域に隣接した肩ほどの土手を上がると、お茶の間でこたつに入ってテレビを見ている。もしくは川の右岸は浸水程度なのに左岸は見渡す限りのガレキである。これは地震による被害が比較的小さかったこと、そして津波による被害は地理的条件により濃淡が強く出ることを示している。テレビを見ていても酷い地域しか映さないため、なかなかこの事実は伝わってこなかった。

2:インフラの復旧度
このコントラストにより、被災地は大きくa:インフラ全滅地域、b:生存インフラ地域(電気・給水・携帯まで)、c:生活インフラ地域(電気・水道・携帯・ガス・コンビニ・ガソリン・宅配便まで)にエリア分けできるだろう。インフラの回復にはトリアージの考え方が導入されているように見え、被害の激甚な地域は後回しに(生き残った住民は避難所にいるので実際は誰もいないため)、生活者がいる地域ほどインフラは急速に復旧しつつあり、bからcへの移行も日々進んでいる(※1)。

3:復旧度によるニーズの違い
水すら復旧していない地域で文房具を配っても腹の足しにならないし、コンビニが営業している地域で菓子パンを配っても100円の節約にしかならない。効果的な支援をするには、地域ごとの復旧度を調べ、ニーズを特定する必要がある。

a:インフラ全滅地域
まれにだが、倒壊を免れた自宅で生活している人がいる。その場合は、食(飲料水、調理を必要としない食料)、住(毛布、布団)、衣(上下肌着、靴下、ズボン)、燃料(ガソリン、灯油、カセットコンロ、乾電池)、衛生(紙おむつ、生理用品、トイレットペーパー、マスク)といった、生存にまつわるものが第一である。なお作業用のゴム長靴と厚手のゴム手袋は、いずれの地域でも求められていた。
b:生存インフラ地域
避難所では生存レベルの物資は行き渡っている様子で、生存プラスアルファの嗜好性を有したものにニーズがある。ごく一例を挙げれば、食(レトルト・インスタント食品やお菓子などの副食、野菜ジュース、サプリ、酒)、住(断熱マット)、衣(スニーカー、帽子)、衛生(歯ブラシ、パンティライナー、おしりふき、リンスinシャンプー、タオル)など。一方で自宅生活者は配給がないため、上記に加えてaに準じたレベルの物資も必要としている。
c:生活インフラ地域
コンビニの棚はガラガラで明らかに物資が乏しいが、自宅・避難所ともに宅配便が届くため、楽天amazonに携帯から注文すれば何でも入手できる。しかし大半の成人が失職しているため、当座の生活費にも困窮しているのが現状だ。よって米、燃料、スニーカーなど比較的高価な生活必需品は、節約に繋がるため喜ばれるであろう。この地域に必要な支援は現金であり、また社会福祉協議会による無利子貸出しなどの支援情報も欠かせない。
4:驚くべき復旧力の高さ
それにしても驚くべきは、メディアで伝えられるよりもさらに早い、被災地のインフラ復旧ペースである。まず自衛隊がガレキを撤去し、道を作る。これがすべての基礎となる。できた道を、電力や水道、通信、もしくはゼネコンの車両が通り、続々と設備を復旧させていく。そして物流が回復し、コンビニとガソリンスタンドと宅急便が営業を再開する。ここに至って、生存にまつわる危機はほぼ脱し、同時に被災者はまったく別のフェイズの問題に直面することになる。商店にモノが並び始めても、買う金が財布にないのである。(つづく)

※1:自治体そのものが消失した地域、アクセスの悪い小集落、および原発周辺地域においては、生活者がありながら、いまだインフラの復旧が遅れている地域もあると聞いた。