アンインフォームド・コンセント

耳介血腫のその後だが、一向に治癒せず、溜まった血を抜いてはまた溜まり、抜き、をもう7,8回繰り返し、そのたびに自由が丘まで仕事を抜けて出るのが負担になっていた。そこで近所の耳鼻科に行ってみたのが先々週のこと。初回はやはり穿刺して血を抜いて、1週間ほどでまた溜まって再診となった。

先生いわく「もうずいぶん繰り返していますよね。今日はちょっと、袋の中に消炎剤を注入して様子を見てみましょう」。なるほど、新展開。

これが、てきめんだった。その晩には軟骨と皮膚が半分以上癒合していて、1週間はくっついたままだった。しかしやはり徐々にまた血が溜まりだし、10日をすぎるころにはもとに戻ってしまったのだが、しかし確実に、これまでのループからは抜け出せそうな感じはあった。

一方で、うすら寒い、ある予感があった。そんな強烈に治っていいわけがない。そんな作用を持っている薬があるとしたら・・・。そしてその予感を裏付けるように、体調に異変をきたしていた。肌のターンオーバーが崩れ、赤みを持ち出した。そして倦怠感とともに、ほてりとへんな発汗がみられた。

そして今日、ふたたびその医者に赴いた。「どうでした?」てきめんに効きました。けっきょくまた溜まってしまいましたが、でも最初の1週間は治ったかと思えるほどでした。「効いたでしょう、ではもう一回やってみましょう。はい耳出して(注射)」先生、これ、消炎剤とおっしゃっていましたが「ああ、いわゆるステロイドですね。現代医学最強の薬ですよ(にっこり)」やっぱりか・・・。

僕には持病のアトピーで、ステロイドにアディクトしていた時期があった。そして、そこから抜けるのは(いわゆる脱ステ)ほんとうにたいへんな体験だった。しかし24歳のとき、僕はそれをやった。ショック的に出た副作用で両目の水晶体と歯を3本失ったけど、しかし薬に依存しないで生きられるようになって、僕はほんとうに楽になった。

それが、このありさまだ。アル中の人が苦しんで苦しんで断酒に成功して10年目に、冷え性に効くからと養命酒を静脈注射されたようなもんだ(んなこたないがw)。僕はその医者の無邪気さに呆れ返り、何も言う気になれず帰ってきた。何週間かにわたって、俺は体調を崩すだろう。

もう結果はわかっている。2度目は初回のように切れ味よくは効かない。そして原因が変わらず内在している以上、また再発する。効きが悪くなれば、回数を増やすか、強い薬に変えるまでだ。その先に何があるかは、いやというほどよく知っている。またもとの医者に戻そう。


落ち込んだ気分を振り払うべく、ユトレヒトの新店「NOW IDeA」のオープニングへ。途中予約しておいたヘアサッルーンへ抜けて髪を切ってまた戻って、ずいぶん長居させてもらっちゃった。良い空間ね。ミキヤ、山野さん、和子さん、薫さんコッキー、尾原ら、一緒。小谷さんにも久しぶりにお会いした。

店じゅうに陳列された、林央子さんによる「Here and There」8号を購入。第1特集が「孤独」、第2特集が「散歩」。なんとも俺にとって切実な言葉が並んでいるじゃないか。しかも駒場マップという小記事まで。「これは私(について)の何かである」という感覚を紙媒体に対して抱ける日がふたたび来るとは思っていなかった。






いったん帰宅してジャリの散歩。晩に三茶で食事、へんな勢いがついてひっさしぶりのカラオケ。僕はたいてい女性アイドルの曲を歌いたくなるのだけれど、カラオケってトランスポーズするとドラムまでピッチが変わっちゃって、トラックが酷いことになりがちだ。そこで徳永英明の女性ボーカルカバー集がたいへん役に立った。心にメモした。