最近、音楽をCDで聞くことはほんとに少なくなっていて、え、じゃあiTunes? ネットラジオ? っていうとそんなこともあんまりなくて、じゃあ何かっつうとmpegなのだった。いや別にaviでもDVDいいけど、まあとにかく、動画。やっぱ絵があると面白いんだもん。同じお金使うならもっぱらDVD、なのだった。

最近とても興味深く見たのは、エド・サリバン・ショウのおいしい所ピックアップ集。66年5月1日のジェイムズ・ブラウンは、ある意味とてもわかりやすい。音楽的にはファンクの黎明期ですごいアフロ感復権っぷりなんだけど、それがお茶の間的にはわかりやすさを加速させていて、「リズム感に優れた陽気な黒人」が揃いのコンポラを着て、土人のビートで歌い踊る、という、とても安心な、破綻のない構図になっている。エド・サリバンも「ジョージア州オーガスタに生まれた彼は、農場でコットンを摘みながら、いつも歌を歌って育ちました」とか無茶苦茶な紹介をしてるし(JBの生まれはサウス・キャロライナのバムウェルだし、まあ5歳でオーガスタの叔母の家に預けられたからそれはいいとしても、そこは農場なんかじゃなく売春宿で、少年ポン引きをやらされてた)、とにかく紋切り型で、収まりがいい。

ところがそのたった2年半後、68年12月28日のスライ&ザ・ファミリー・ストーンは、お茶の間にとって、とても取り扱いが難しい。70年代が始まっているからだ。冒頭スライは、あの有名なメッセージ「Don't hate the black, don't hate the white, If you get bitten, just hate the bite」を叩き付ける。客席ポカーン。バンドは白黒男女が入り混じっていて、ドラムは白人だしラッパは女だし、ビジュアル的にとても据わりが悪い。すべての音が過入力で歪み気味で、すべての発声はシャウトに聞こえる。とても騒がしくて、禍々しく、フリンジやスパンコールまみれの衣装はチンドン屋みたいだ。曲中でスライとローズは客席に降りて煽ろうとするのだが、その滑りっぷり、善男善女たちの鼻つまみっぷりたるや凄まじく、一応ノってる白人もいる一方で、やだなー黒人だからって俺こんな奴らと一緒くたにされたら参っちゃうよなー、って顔して眺めている黒人もいる。そして、このドン引き映像が全米の「カラー」テレビに映ったことによって、ウッドストックの季節が訪れた。

もしくは36年ジャンプして今年の2月、 ジェイ・レノのザ・トゥナイト・ショウに出たプリンスを見る。演奏は完璧に統率が取れていて最高だ(ちゃんと生)。プリンス最大の発明である、マイルスが度肝を抜かれた、ベースの役目を果たさないベースラインも健在。メイシオは2000年の競演以来完全に取り込まれてしまっていて、パーフェクトに振り付けをこなしている姿を見ると複雑な気分だけど、さておき演奏が終わり、喝采に包まれながら、ヘイヘイヘイ!みたいなソファセットに腰掛ける殿下。ソファには運の悪いことに先客がいて、もひとりのゲストは・・・超保守派、ユダヤ大嫌い、あのトンデモ映画パッションをむりくり撮ったメル・ギブソンだ!  うわ、チビでオカマのキモい黒人がこっち来たよ! ソファの席を飛び退いて離れるメルたん。握手をするかと思いきや、手の甲をヌルっと撫でるプリンス。振り払うメルたん(笑)。子供の頃どんなミュージシャンを見てた? とジェイ・レノに振られて殿下が答える。「ジェイムズ・ブラウン、そしてスライ」。この40年で何が変わって、何が変わらないのか。

あとはねー、76年から84年までのジャコを1年ごとに見て、才気走りまくってる若造に脂が乗って絶頂を極め、そしてドラッギィな晩年を迎えるまでのグラデーションを鑑賞したり、ボウイの85年渋公でホテロックの老成っぷりに驚いたり、あと小沢がポンキッキで歌う「おならで月までいけたらいいな」をいっしょに歌ったり、えーとあとねー、パーフリ岡村ちゃんが並んでトークしてるジャスト・ポップ・アップ(ホステスは野沢直子と田中美奈子!)で、小山田がイアン・ブラウン・コスプレしてるの見ていたたまれない気持ちになったり、あ、あとビートルズの前座でドリフターズが演奏してるシーンを初めて見て、そのむちゃくちゃなビート感に度肝を抜かれたりしています。こんどみんなでFirewireハードディスク持ち寄って交換会やろう(パスコアル行けなかったからってヤケになってるわけじゃないですから・笑)。