とても大事な発見があったので書き留めておこう。7時過ぎ、仕事をしていたら突如無性に蕎麦が食いたくなって、それはもう得体の知れないほど大きな衝動であっという間に脳幹から指先にまで行き渡り、居ても立ってもいられなくなってソバー、ソバー、とうわごとのようにつぶやきながらコートを羽織り、折からの雨の中バイクを飛ばした。ところが土曜の晩というのが大きなトラップで、くろ麦、一栄、おくむら、福田屋と、行く先行く先、みな閉店。挙げ句の果てに、ええいままよ、と意を決して駆け込んだ渋谷駅構内の駅そばまで閉まっていて、ズブ濡れの俺は_| ̄|○とくずおれた。

結局のところ、半狂乱でヘルプを求めた森さんからセンター街に一軒ある、と聞いて向かった渋谷更科、がようやく開いていてありつけたのだが、やはりというか何というか、度肝を抜かれるぐらい不味かった(笑・ほんと、富士そば行けばよかった)。でも、ほんとうに不味かったんだけれど、自分でも驚くほど満ち足りた気持ちになったんだ。大満足しちゃった。

こんなの読んだみんなにしてみりゃ初志貫徹、とかひと言で片づいちゃう話で何のことはないんだけど、蕎麦屋がことごとく閉まっている事態を前にして1)手近で開いてる旨い店に鞍替えする、2)諦めて家に帰る、3)不味かろうが意地でも蕎麦食う(なにせ渋谷は蕎麦屋不毛地帯だし、まともな蕎麦屋はもうしまう時間だった)、という選択肢を前にしたとき、ここ5年くらいの俺は間違いなく1)を選んでいたわけで、むしろその場当たり的な出会いを楽しむというか、あの蕎麦屋閉まっていたからこの天ぷら食えたんだよね良かった、みたいな姿勢でずっと来たわけだ。これ食いもんの話じゃないよ。その、マイライフ全般で。

でも、この日何でか俺はいつもみたいに衝動を状況に譲る気になれなくて、そんで結局ありつけた蕎麦は不味かったのに、大満足だった。そうか、突き通せば不味くても満足なんだ、ってことに、我が身のことながらびっくりしたよ。そりゃ突き通して旨けりゃベストだ。でもそれが叶わないとき、突き通して不味いもん食わされるより、流されて旨いもんにありつけた方がいいでしょ、ってずっと思ってたんだ。そんでそうしてきた。でもどうやらそれは俺が勝手にそう思いこみたかっただけの話で、実際食ってみたら、何度も書いて渋谷更科には申し訳ないけど(笑)、えらい不味かったのに満足だった。それがわかっちゃった今、俺これからどうやって生きてけばいいのか、ほんとに困った結論になっちゃって、正直頭を抱えている。