悪意のない何らかの有用な進言によって隣の町で隠蔽されていた事柄が白昼の下に晒されてしまった、という話。あるある大辞典よろしくヘルシーティップスの隆盛によってあらかた掘り尽くされた感のあるアミノ酸にまつわる言説だけれども、BCAAなんてマッチョ業界の単語までコンビニに浸透するようになった現在、主要アミノ酸の名前もメジャーになったことで、いわゆる栄養ドリンクの神通力が霧散してしまった気がする。なにしろ何か合法すれすれの(ラッシュくらいは何らかの威力がありそうな)ドラッギーな興奮・賦活成分であるかのようなイメージを放ちまくっていた有効成分が、大豆や、せいぜい牛乳や魚介の絞り滓から生成した、ただのアミノ酸の一種に過ぎないと判明してしまったからだ。

リポD、エスカップリゲインなどのアミノエチルスルホン酸(通称タウリン)筆頭に、アルギンZはアルギニン、アスパラドリンクはアスパラギン酸、いずれも主要アミノ酸である。っていうことはだ、あのペットボトルに入ったスポーツドリンク味のアミノ酸飲料と、ウリにしている有効成分は大同小異なわけ。でもペットボトルのほうを飲んでも、ウオリャーって気にはなれないよね。結局のところ、あの栄養ドリンクの掻き立てるヤッタルデー・マインドの大半はプラシーボで、あとは糖分が血糖値を上げ、若干の漢方とカフェインがコーヒー程度に発奮を促してくれる、ってくらいなわけだ。ずーるいの、って思ったな、俺は。だってなんかタウリンなんて、静脈注射したらぶっ飛んじゃうくらいギンギンのサムシング・ケミカル、って感じの押し出しだったじゃんか。にゃー。

似たような話と先日ちらっと触れた輸入文化の誤読という話の複合で言うと、サントリーの烏龍茶のCMで、急須で烏龍茶を淹れていたので驚かされた。ブルーズと淡谷ブルース、コーヒーと缶コーヒー、ボロネーゼとスパゲティ・ミートソース以上の乖離をともなう誤読まみれで輸入され、その名が拡散することとなった大悪役であるところのあの製品だが、当然ながら普通に淹れた烏龍茶はあんな水色をしていないしあんな味もしない。あれは半日ないし一日放置してタンニンが酸化しきった、要するにフェイクどころか痛んだお茶の味と色であって、フレッシュな状態を提供できなければ痛んだ状態をスタンダードにしちまえ、という素晴らしい発想を秘めた飲料なのだ。そのCMで、フレッシュな烏龍茶を淹れる情景が映るというのは、なんか、えーと、ヤケクソというか、インチキを自分で暴いちゃっていいのかなー、ってこっちがビクビクしてしまうのだ。だからどうって話でもないけど。