またもや一日中伏せっていた。なんかこんなに長い間籠もっているのはここ数年なかったことで、新鮮な気さえしてくる。動けなければ動けないで、ずいぶんごぶさたしていたテレビをえんえん見たりして過ごしているのだが、ベッドに横になったままで画面が見えるように家具の位置を動かして、ただただ動かず布団を被り、自らをあたかもテレビ試聴装置、とでも言うべき透明性に浸して一日中眺めていると、それはそれで十分にエキサイティングな体験だ。テレビが現代人にとっての延命装置であることを心底痛感する。俺いま、ワイドショウとかゴシップとかお笑いとかニュースとかに詳しくて、ネット上のトピックスには疎い(無線LANを導入したもののバッテリーがヘタっていて、ベッドじゃ2時間弱しか保たないのだ)。その情報摂取バランスが、少しヘルシーな感じもするが、これは錯覚だろう。

とりあえず書いておくべきは昼ドラのショコラだろう。ツルモクの人の原作はさっぱり駄目なのだが、演出とキャスティングが滅法良い。シベ超3で抜擢され、駆け出しのキャリアをさっそく台無しにしてしまった大塚ちひろは、西田尚美を思わせるラバー質の皮膚感(笑うと鼻筋に皺が寄る)と、顔面から四肢までびっくりするほどニュートラルな骨格が好ましい。要するに突っ込みしろの少ない20世紀スタイルの美少女で、じゃあ21世紀流とは何か、と言えばやはりドナルドリップスなのだが、俺は徹頭徹尾ドナルドに汲みしないのでCCレモンの少女とともに旧世紀の思い出として大切にしていきたい(俺が)。ちなみに手元に94年のクレアがあるのだが、メイクパートのお悩み別対処法、みたいなコーナーで、アヒルみたいにめくれて見えてしまう上唇を目立たせないためのリップライナー・テクニック、という項目がある。10年経ったいまや、いかに上唇をめくれ上がらせるかでメイクさんの技量が問われているのだから、えーと、ディケイドとは恐ろしい。

話を戻してショコラだが、割と昼ドラにしては時間を掛けて演技を入れている様子で、それは特にひさしぶりにメディアで見る元男闘呼組高橋和也に顕著だ。このドラマで彼はすごく良い。楽しそうに仕事をしている人を見るのはこちらも気分が良い(俺が織田裕二に同調できない理由の反対だ)。敵役の黒田アーサーは少々演技過多で我修院予備軍か? と人を訝しがらせるだけの哀しみがある。正直ドラマツルギーについては何ひとつ書くべきことがないのだが、この時間帯のドラマで変なモンド意識もなく、腐らず皆楽しげに大らかに仕事をしている風なのは、部屋の風通しが少し良くなるように思う。あと主題歌がドゥ・アズ・インフィニティ、という凄い名前の人たちで(良識ある人間が口走れるバンド名じゃない)、エイベックス的なバックグラウンドの人たちだと記憶していたのだが、なんか彼らも突然、異様に抜けが良くなっていて可笑しい。要するに俺は囚われから解放された人の姿を見るのが好きで、そういう雰囲気がこのドラマには満ちている。完全な余談だがKABA.ちゃん、にも満ちている。