朝のうち、昨日列島を上陸・通過した台風の影響が残っていて、湘南、千葉ともに全域がクローズアウト。荒木くんと連絡をとり、午後イチに海が落ち着いていれば出かけることにして、2度寝。かくして1時過ぎに電話が掛かってきて、湘南へ向かうことに。タバタはいくら電話しても出ないのでもうほっとく。前に一度ご一緒したことのあるiさんカーがやってきて、3人でレッツゴー。このiさんというのがもう空前絶後に男前なんだけど、それはひとことで説明できる子供向けの男前っぷりじゃないのですごく書き方が難しい。ただその男前はわかる人にはわかるようで、俺がiさんとはじめて出会ったとき俺はデート中だったんだけど、情けないことに彼女の関心をiさんに根こそぎ持っていかれてしまったことを告白しておきたい。しかも彼は、ジャリをあやすだけで、そのあやしかただけで彼女を魅了してしまったのだ。

さておき、第三京浜からいつもは横浜新道なところを横横に入って、逗葉新道から逗子を目指す。iさんの手引きによれば、湘南がジャンクコンディションなこんな日は、普段は波が立たない三浦半島側に良い波が立つという。サーフィンという視点を獲得してから初めて臨む逗子葉山の海は、切り立った崖と磯の連続、そして豊かな海藻によるヨード臭に特徴づけられた、湘南とも千葉とも異なる不思議な海に見えた。荒木くんによると日本海に少し雰囲気が似ているそうである。長者ヶ崎、大崎、カブネ、玉石と見て回って、大崎に入ることに。このポイント、すごくローカル色が強い印象でややビビりながら入ったんだけど、ちょうどサイズが落ちてきたところでローカルの面々と入れ違いになる格好となり、運良く緊張を強いられる体験は避けられた。着替えたり談笑している強面さんたちの間を、失礼シマース、って感じで歩き抜けて、断崖にかろうじて貼り付けられた階段を怖々下る。

しかしこのポイントの景色について、なんて言い表せば良いのだろうか。よくある生き物地球紀行、みたいな番組で(そんな番組あるのか知らないけど)、アシカとかナマティとかタマちゃんとかそういう海洋生物の生態ルポを見ている感じ、とでも言おうか。数十メートルある断崖絶壁に囲まれた磯から、寄せ波のタイミングを見計らって海に身を投げ込み、ボードで着水、そのままパドルアウトする。振り返ると、地層も鮮やかな崖の上半分には鬱蒼とした森が茂り、その上には急に晴れだした空と雲。それこそポリネシアかどこかの島でワンドクルーズをしているような風景だ。急深な地形のため、基本的に波は立たず、海面は濃い緑色にトロンと凪いでいる。目指すは沖合のポイントブレイク。岩礁が局所的に隆起しているため、その浅瀬でだけ波が割れるのだ。岸から見るとほとんど波が立っていないように見えるのだが、実はそれは遠いから小さく見えているだけで、近づくごとに思いのほかいいサイズの波であることが判明してくる。

先にポイントに入っている人の姿が近づいてくるのだが、どうも様子が、というか姿勢がおかしい。あれなんだ? と思っていると、手になにやらパドルを持っている。うわー、シーカヤックだ! はじめて見た! すごいよシーカヤック、俺はなんか勝手にイメージで、凪いだ海をちゃぽちゃぽツーリングして回る道具だと思っていたんだけど、大間違い。サーフィンやボディボードとまったく同じように、ガンガン波に乗って、ターン、カットバック、リッピング。あんな凄いスポーツだとは思わなかった。勝手にユルいスポーツだと誤解しててゴメンなさい。そして俺らも、マシンブレイクとしか言いようのない、ややタルいもののきれいにショルダーの張った、大きすぎず小さすぎずの理想的な波にありつけ、いやーもう楽しかったなあ、夢心地の2時間ちょい。繰り返しになるけど景色がものすごくワイルドで盛り上がったし、いつも波が立つポイントじゃないだけにプレシャス感満点。また機会があったらぜひ入りたい場所として記憶された。<71回目>大崎、ほぼ無風、腹ムネ、トロめ、2時間ちょい。