深夜から降り始めた強い雨も陽が高くなるにつれ上がり、ときおり雲間から突き抜けた青空が顔を覗かせる。よしゃ、ってことでジャリ預けて海へ。これまでは荒木くんかタバタといっしょだったので、行きから帰りまで完全に一人なのは初めてとなる。ちょっと心細いのが、これまた最高に気持ちいい。鵠沼に着いた頃にはちょっと汗ばむくらいの日差しとなり、それが逆に、風の肌触りの秋っぽさを強調する。

なーんてこと思っていられるのも浜に着くまでで、防風壁から一歩出た途端、肩に掛けていたボードが煽られて体ごと吹き飛ばされそうになる突風。海面は乱れに乱れ、砂を巻き上げて茶ばんでいる。いつもは平日でもごった返すこの海岸なのに、ほんの数えるほどしか入っている人がいない。うっわー、こんなんどうしろっつうのー。とか渋い顔でつぶやいてたら、スクーターでやってきたローカルの子に、「今日はダーメっすね、入るんすか?」と苦笑いされてしまう。どーしようねー。

気象情報では風は時間とともに弱まるはずなのでしばらく様子を見ていようかとも思っていたのだけれど、帰りの時間がある以上に、風に巻き上げられて顔に打ち付けてくる砂粒が痛いわ目を開けてらんないわで、えーいままよ、覚悟を決めてシーガルに着替える。ボードを持って浜まで歩いていくのも一苦労、水に入れば右から左からランダムに割れてくるのでもうなにがなにやら。それでも人が少ない海は気持ちよく、一応アウトまで出て、あとはショアブレイクで延々練習。テイクオフの練習というよりドルフィンの練習だったな、メインは。気づくと意外と時間が過ぎていて、慌てて上がって着替えて帰宅。鵠沼、強烈オンショア、どチョッピー、3時間半。タバタがクルマを買ったため、電車サーフィンはこれが最後になりそう。俺も免許取るぞ!(えー?!) 

帰りの電車で、もうしっちゃかめっちゃかにいちゃいちゃしているカップルがいて、なんというかまあ、ニヤニヤ見てしまう。男の子はとてもヘルシー、というか漁村でモリ突いてた小学生がそのまま大きくなったみたいな朴訥な印象で、眉が濃く、褐色の肌がラバー質で、通った鼻筋に皺を寄せながら細い目を細めて笑う。女の子は黒とカフェオレ色のボーダーのタイツにスカートを合わせ、ブラウンのノースリーブにいかにも今年なボヘミアンなストールを掛け、似たテイストのプリント地のバッグ。踵のないスウェードのスリッポン。相模大野のファッションリーダーって感じね。二人でラブホでアサヤンとか読んでくれよ。あとちんかめみたいの見て彼女が妬くとか、それで勢いづいて彼女が持ち歩いているホルガでハメ撮って現像先に悩む、とかさ。

デジカメはプライベートなエロフォト問題を楽勝で解決してくれたけど、気に入った女の子が受け付けやってるラボに現像に出してしまいそのときは調子に乗っているので反応見たれーくらいの勢いなのだが後で冷静になってみると赤面と背筋に寒気の両方に一気に襲われて自律神経に悪い、みたいな情緒を欠くよね、やっぱり。なんて思っていると、目の前では、もうつねくったりこねくりまわしたりカニ挟んだり(笑)、女の子は男の子のくすぐり方を覚えたてで試したくてたまらないし、男の子は衆目の中自慢の彼女といちゃいちゃしてる俺、への盛り上がりで自分で設定した男らしさ(バカおとなしくしろよ、などの低音セリフ)が上の空になりかけちゃってる。気持ち的には「自分ら最強」なんだろうなあ。あのやたらめったらな勢い、あの傍若無人っぷり。懐かしいのかい? 俺。

帰宅してシャワー、10月ももう中旬になろうかっつうのにまたしても日焼けが痛い。メールの返事を書いてちょこっと作業して、新宿にあるサンデービジョン/セキレイの事務所にこないだ忘れてったジャリの服を取りに行って、そんでもって外苑前へ移動してタグと仕事の打ち合わせ。用件は早々に済ましてサインで一杯。のつもりが2杯。妻が待っている、と言い残してタグ(不労所得者まであと一歩・33歳)は帰り、渋谷に移動して飲み直し。ゲイのTちゃんと一緒になって友人の彼女をいじめたりして(チビオナペッツと呼ばれ)騒ぎすぎてちょっと痛飲。毎日楽しい。そして苦しい。総じて満足だ。21世紀の俺、は、自分で自分を満足と言い放ち、幸せとか愛とか口走っていく。いくのだよわっはっは。