どうしてこうまでイライラしているのだろう、というくらいイライラしていた。なにしろ近所のお茶屋さんの簡さんにまで、しみったれた投げやりヴァイブを放ってしまい、なんというか、けっこうかなり恥ずかしい。イライラしている僕は異様に饒舌となり、いわゆる辛辣な方面のトークが喜ばれる場所だとそれなりに話が弾んだりして調子良さそうに見えたりもするが、僕はそんなこと話したいわけじゃないし、と思っているとその鬱屈が言葉端に走りはじめ、慣性に負けて転がり出し、最後には毒舌なんて大嫌いだ、とか言い残してその場を去りみんなが困る、といういつものオチになる。学習しなさいよ、と自分に言う。

晩にSide7 Walkerの打ち上げ。石本に留守番してもらって新宿へ。西武新宿って久しぶりに来たなあ。タフな街ですね、あいかわらず。焼き肉を振る舞っていただき、すごく食べたような気が。ごちそうさまでした。隣に座った方が本業獣医さんで、怖い話をいっぱい聞けて勉強になりました。ほんとうに怖かったので泣きそうです。あとは懐かしバナに花が咲き。ホッテントットかウィグルワートか、とか、イングラムかウージーか、とか、黒蓮か白蓮か、とか、ぜんぜんガンダムじゃない話ばっかりしていた気がします。ジャリがむずがりだしたようなので早々に帰宅。石本を送ってベッドに倒れ込む。今日はしゃべりすぎた。2段論法程度の浅い思索が複数素早く現れては短絡して消えていく。どれもガジェッティで使いものにならない。

テレビを点けたら24時間テレビをやっていたんでアチャー、と思ったけど時すでに遅し。チャンネルを回すと女王陛下の戴冠50周年コンサートをやっていて、うっわー、うっわー、とか言いながら見る。オジー・オズボーンはヨイヨイで見てらんないし、クリフ・リチャード岩本恭生とかあのGSの人、なんてったっけ? 忘れたけどそれみたいで、まったく信用ならない感じ。トム・ジョーンズはマーズアタッキンでグレイト。話には聞いていたけどブライアン・ウィルソンがほんとうに出てきて、最悪な紹介にもめげずに(テムズ川津波が起きたらこの人がサーフィンしてみせましょう、みたいな。そりゃコカインもヘロインもLSDも彼を救えなかったわけだ)、素晴らしい演奏だった。

終始鍵盤の前に座って歌うんだけれど、マイクスタンドがドラムのマイクスタンドと干渉してブルブル揺れていて、でもその震えを止めようとしないのがよかった。あとびっくりしたのは、グッドヴァイブレーションのサビのところでちょっとブギーっぽくなると、それまで2・4拍で指を鳴らすモーションでビートをとっていたのから、10本の指をひらひらさせながら左右に流れるようなジェスチュア、たぶんサーフなんだと思うんだけど(笑)に必ず変わって、その左右の往復運動が曲のビートとまったくリンクしないで不定形に左右をさまようのね。それはつまり彼があのグー・グッ・グッ、グッバイブレーション、って部分をどう認識しているかそのものを表していて、整数的な律動じゃなく、さざなみのような揺らぎの流体として聞こえているのがわかった。すごいセンスだと思った。もうけっこうご老体なのかな、と思っていたら、演奏が終わったとき、すごい速度でシャッと立ち上がったのには2度びっくりさせられた。矍鑠とはああいうことね。

コンサートはまだまだ続いていたんだけれど、どうせポール・マッカートニーがHer Majestyとか歌っちゃうんだろうな、次はウィングスのナンバー、007とかでラストがヘイ・ジュード。むー。とか思ってふたたびチャンネルを変えたら8で割れ目でポンをやっていたのでこちらに定位。僕は麻雀がほとんどできないけれど、あの番組は大好きで、環境ビデオ(15年前の言葉)としてはなかなかなもんだと思う。ずっと見ちゃう。CMでみたび1に戻したら、もう女王陛下のほうはヘイジュードのリフレインのところで大団円を迎えていて、ちょっと可笑しかった。イギリスの時代なんてもう2度とこないよ。もう十分に恨みを買ったじゃないか。あとは愛されて精算されるんだろうけど、愛されては覇権なんて取れるべくもない。