昼から雨足が強まる、という天気予報のせいか、ワールドカップの決勝のせいかわからないけど、恐ろしいほど世界から覇気が取り除かれた一日だった。湿気をたっぷり含んだ弱い南風の中、代々木公園にジャリの散歩に向かう。まずあからさまに、交通量が少ない。川辺に住む人は川の水量の、海辺に住む人は波や潮の調子が一見して判別できるように、大通り沿いに住むようになって僕は街の動きが交通量から推測できるようになった。もう少し仔細に話せば通過する車種や人種、というのも大きな判断材料になっているのだが。そんで、今日の山手通りは、ちょっと異様なくらい流量が少なく、同時に休日らしからぬ車種分布だった。かといって平日っぽいのでもなく、あえて言えばペルーっぽいというか。適当ですけど。

なんだかヘンな日だなー、とかって思いながら代々木公園まで歩いていくと、前日雨が降って下草が濡れているせいもあるんだけど、それにしても人出が少なく、しかもなんていうのか、ギラギラした休日カップルや誇らしげに余暇を取る家族連れ、みたいのがまったくいなくて、テキ屋まで含めみんな完全に腑抜けていて、失業者の群れみたいだった。いまにも降り出しそうな曇天がその印象に拍車を掛ける。別に陰鬱とか疲弊って感じでもないんだけど、うまく言えないな、ピースに積極的と消極的なのがあるとしたら後者っていうか。悪くないけど、ちょっと異界っぽすぎて空恐ろしくなる。

古今に行って歩道に出したテーブルでお茶を飲んでいると、もともとここに来る人たちの性質もあって、完全に日常の感触から遊離してしまっていた。牛久保がいて、なんか名古屋あたりで内戦やってるって感覚だね、いや、若狭湾あたりがキタに攻め込まれ中でその休戦日? とか、津波が来るのに逃げない人たち、とかそういうことを話す。逆シャアオアシズが堕ゆく姿を地平線に見ている街の人、みたいなシーンがあったと思うんだけど、あれに近いかもしれない。戦時下の非戦地帯、という意味では、ワールドカップにまったくコミットしなかったこの店の人たちも似たようなものかもしれないけど、それが街全体に蔓延してしまっているのが不気味だ。