麻利子さん
ロクジェでさらに体調を悪くして、もうとんでもないことになってきたぞ。自律的な体調管理は基本のはずなのになあ。でも楽しかったからいいや。ぜんぶオッケー。余裕っしょ。
夕暮れ、予定帳を見たら麻利子さんからの絵はがき。展覧会きょうまでだった。行きたいんだけど連れも体調悪げでどうしようかなあ。ぐずぐずしてたらいよいよおしまい、って時間に身じたくして渋谷駅に急ぐ。東急本店の前でroomの兄ちゃんとすれ違いアイサツ。何度でも書くけど、街を歩いていてぐうぜん誰かと出会うのが僕はとにかく好き。それだけで一日気分いい。
自由が丘は相変わらず気取った下町、という風情。暮らしやすさとハイブラウなプライドの両方を満たそうとなると、こういう町ができるんだろう。僕はどこか浅はかな感じがしてあんまり好きじゃない。英米文でいえばオースターどまりって感じ。タクシーを拾って会場へ急ぐ。でも桜並木を入ったあたりで運ちゃんお手上げ、降りて探すはめに。
公衆電話で電話している男の子がいて、いまどき若いのに公衆電話なんてめずらしいなあ、と思っていたら展覧会のカードを持っていたのでにっこり。電話の最中におもむろに近づいて同じカードを見せたら向こうもにっこり。道を聞いていたようなので連れていってもらう。
会場となったBORN FREE WORKSは、ちょっとハウスに似た、木造平屋建てのステキ建築。真っ白なペンキ塗りで、ガラス窓が多くて、明るくて、どこかがらんとした寂しげな感じもして、とにかく居心地のいい場所だった。タイルの壁で隔てられたキッチンには、ガラスの鉢やささやかな花を差したビンがきちんと並んでいて、でもひとつも嫌味じゃない、離れわざのようなバランス感覚がそこには息づいていた。
肝心の展示だけど、もうチクリンの服はすべてはけてしまっていてやや残念。でも連れは見たらぜったいねだるだろうから、ちょっとほっとしたのも事実。麻利子さんはハンケチやきんちゃくなどのこまものと、ポストカードが数点。どれも麻利子テイスト爆裂で、というかこまものに付いた値札シールの文字のほうが僕の心を打ったわけだけど、こういう人が同じ時代に近くに生きているってだけで僕はもう感謝だし、世の中捨てたもんじゃないなって思う。
麻利子さんの手書き文字のことを思う。麻利子さんに文字を書かれた紙切れを全部とっておいて自分のものにできたら。お茶を飲みながらたあいもない話をしていて思ったけど、この人はある種の達人なんだと思う。美しさと暮らしの達人? 違うな、そんなゴリゴリしたものじゃなくて、もっとはかなげななにかの達人。なごり惜しいところだけど、もう店じまいの時間なのでおいとますることに。連れが頂きものまでしてしまって、どうもありがとうございます。ぜひまた会いましょう。
帰り、自由が丘の駅まで歩いてみる。僕はリアル健脚でいくら歩いてもぜんぜん平気。だから疲れに気づかずに連れの人を不機嫌にさせてしまったことが何度もあるけど(恵比寿→千駄ヶ谷バーゲン行脚とか)、この人はいくら歩かせても文句ひとつ言わずついてくるので助かる。今度マジ東海道五十三次でもやりますか。もちろん真夜中のほうな。渋谷行きの東急バスで神泉まで帰って、パーラーでデリ買って帰宅。2chはやっぱり面白い。