登館部の気持ちが

きょうも電話が少なくて平和。もちろん仕事は山積み。

急ぎを要するMOがマウントできない。推測するに、新しめのUSBのドライブでフォーマットされたもののため、ドライバが対応なさってない様子。しかたがないので大迷惑は承知でペックンにお助け電話。遅くにペックンがパワーブック持参で来宅。なんとかコピーしてもらう。いつもいつもすいませんほんとに。

さらにペックンに甘えてマニアックまで送ってもらう。ちょっと楽しみにしていたHard House Disco。だってタイトルがいいじゃない? Hard House Disco! そりゃ期待もしますよ。前情報としてバソスキとか使うらしいなんて小耳に挟んだし、これはかなーり僕好みだろうってわくわくしてた。

えー結論。ファックトランス(FT)。どーこがHardでHouseでDiscoなんじゃい! 入ったら平田トモ(101歳)で大ワープ大会。まあいい。メインのUirohはもともとLovelyのメンツだ。ワープ系の集客も欲しかろう。実際客は4年前そこらへんに通ってたようなのばっかりだ。だーがーな〜〜〜!

Uiroh、バソスキなんて一枚もかからなかった。WorkもIHRもFresh Fruitsだって一枚たりとも。ワープ寄りのハードハウスで始まって、あとダークめのトランス。クソくだらねえブレイクばっかのトランス。やや上がってたところで酒も飲んだんでそれなりに踊ってはみたものの、やってらんねええええええええよ! が本音。最悪! もう行かない。

翼くんと阿部さんに会った。遅めに偵察に来た阿部さんは「平田トモ(89歳)避けて遅めに来てはみたんだけど・・・」って笑ってたよ。ファックトランス。みんな死んじまえ。

帰り、東大を抜けるときに駒寮の屋上に上がってみた。ツタのからまる荒れはてた階段を登り切ると、小雨まじりの曇り空が視界いっぱいにひろがって、空に食べられちゃったような気分。すぐそこの山手通りの騒音も、なぜだかここへは届かない。こぬか雨に包まれて、穏やかな気持ちが満ちてくる。恋人は「ロビンソンの庭みたい」って言っていて、まったくそのとおりねって思ったんだけど、僕はそれより六道山のことを思い出していた。

六道山っていうのは、名前に山なんて付いてるけど、ほんとは狭山丘陵の小高い丘にあるただの小さな公園。6つの林道が交わる場所だから六道山って、ずいぶん安易なネーミングね。瑞穂町と埼玉の県境にあって、僕の実家からだと自転車で1時間近くかかってしまうんだけれど、小学生の終わりから大学を出るまで、僕は幾度となくここに来てはぼんやり時間を過ごしていた。

はじめて六道に行ったのは、ハレー彗星が来た年だから1986年、秋のこと。のちに北アルプスでの滑落で亡くなってしまう音楽の小沢先生に連れられて、彗星観測に来たんだった。そのときの枯れ落ちた木の間から見上げる空と、熱っぽく伝え聞いたうわさ話とは程遠く、ちんまりぼんやり光る彗星の姿は、14年経ったいまでもはっきり思い出せるよ。

それから程なくして、僕は自転車で六道に通うことが大好きになった。最初は連れてきてもらった道をトレースして、しばらくすると村山砦のほうから登ってくる林道を覚えて、時間があると週に何度でも、ここに来ては展望台の上で空と森ばかり見ていた。瑞穂町の緊急時備蓄倉庫も兼ねているレンガ造りの展望台は、お花見シーズンとバードウィークの前後以外は訪れる人も少なく、たまにデートで寄ったカップルが「わあ、きれいな景色ね」とか言って1、2分眺めては帰るくらい。あとはまた、鳥の鳴き声だけが響く静かな場所に戻って僕はひとりきりだ。

バードウィークって書いたのは、近くにオオタカの営巣地があって、子育てのシーズンになると毎年15秒くらい、どこかのニュース番組がおきまりのレポートを流したりするから。慣れない双眼鏡を手にした家族連れなんかが、飛び立つカラスを見つけては、あわててレンズを顔に押しつけたりしてる。雛を落としては売りさばく密猟者があとを絶えないため、この時期には野鳥の会の観察小屋が建てられて、一部の林道の通行が制限されたりもする。毎年その光景を見ていた僕も、オオタカの姿を認められたのは一度きり。トンビやノスリとは違う、ましてやカラスなんかとはぜんぜん違う、たいした風格を備えた猛禽類のはばたきだったよ。

中学校に上がって体力もついて、当時はまだ自慢げに乗り回せたマウンテンバイクなんか手に入れた頃には、山口湖から長い林道を抜けて六道に至るコースも覚えて、僕は山通いがどんどん好きになっていった。南に広がる横田基地から、ぽってりと腹に卵を抱えたC-17が危なっかしく飛び立つさま。西には秩父奥多摩〜丹沢の峰の連なり。ぽこりと飛び出た頂上は、僕をずっと見守ってくれている、大好きな大岳山。コンディションがよければかすかに雲取の頂まで見えて。

東の森の中にはユネスコ村のオランダ風車、もっと向こうに西武園、そして新宿の高層ビル。僕は一度も見たことないけど、筑波山だってみえるはず。高校に入るとすぐ、僕は単車の免許を取って、もっと気軽に六道に寄れるようになった。都心の遊び場を覚えるようになってからも、ひとりで本を持って、あるときは誰かをケツに乗せて、ここの景色を眺めていたのを思い出す。もう4年近くも行ってないけど、変わってないかな、六道山。トトロの森とかゆってへんてこな開発とかに遭ってなきゃいいんだけど。

そんな懐かしいことを思い出しながら、目の前でのびをする恋人を眺めていたら、昔よくくちずさんだ歌が出てきたんだけど。それもじきにFTの怒りで立ち消えた。ファックトラーンス!