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小学生も高学年になった頃、近所の上水ショッピングセンターに、地域で初めての塾ができた。漢字は定かではないが創研塾といったはずだ。そしてこの塾には本校なのか何なのか(私は通わせてもらえなかったので実態は知らない)もうひとつの教室が箱根ケ崎にあって、一部のカリキュラムを受けるために、上水の子供たちが瑞穂町まで出かけていった。
その子供たちの中に、私より2コ上の、吹奏楽部で一緒だった先輩がいたのだが、彼女があるとき、瑞穂の教室にビートルズの曲を全部諳んじている男の子がいる、と言った。私は兄から奪った歌本「ソングブック100」のおかげで100曲の半分くらいは歌えたものだが、全曲となると200曲を超えるはずだ。しかも全曲ギターで弾き語りできるらしい。
そうそう中学生にできる芸当ではなかろうと思ってその〇〇くんの名字を聞いたところ、大滝、というそうだ。瑞穂で大滝、ビートルズ全曲。すぐにピンときて私は、その子のお父さんは歌手だと思う。聞いてみな。と伝えた。案の定だった。リスナーとしてではなく、実生活で大滝詠一さんと人生がクロスした唯一の瞬間、というお話でした。