弊社の女優が出演するので、アサヒアートスクエアに古川日出男さんの朗読ライブを見に行く。端的に言って、最近見たあらゆるステージでもっとも触発されるものだった。帰り、打ちのめされて無力感でいっぱいになりながら吾妻橋を渡り、開いてる店であまり美味くない鰻をかっ込んで帰ってきた。

帰りなんだかタイミングがあって若い友達と落ちあい、品川のアンミラに、どんくらいになるだろう、10年ぶりくらいに寄った。80年代にはあれだけ輝いていたアンミラ、ダッキーダックと並んで高校生デートの主戦場となってくれたアンミラだが、2013年の網膜にはグロテスクにしか映らなくてびっくりした。

それで思い出したが、確か私が生まれて初めて赤ワインを注文したのは、アンミラだったのではなかろうか。デキャンタ、という存在がわからなくていたく難儀した記憶がある。出てきたワインは、フェノールフタレイン溶液みたいな、味も色もケミカルな雑なものであった。バブル経済華やかなりし頃だが、市井にはまともなワインがほとんど出回ってなかった。街場のビストロでワインリストが選べる程度に充実したのは、90年代も半ばになってからだったように思う。ネット以前、ほんとに我が国は貧しかった。