おいしいものを食べることより、おいしく食べること。

という、なんだかみつをみたいな思いつきに撃たれて、半日くらい動けなくてうんうん唸っていた気がする。自分にはできないことである。私はつまらない人間だ。鰻を食べれば蒸しが強いとかタレがこなれてないとか焼きが雑だとかアラが目に付く。そうやって食べればたいていの鰻など短所の固まりとなる。同じお金を払って、得られるおいしさはだいぶ目減りするのだから、損である。

しかし主観主義では納得がいかぬ。私の魂がそう申すのである。雑なものは雑だし良いものは良い。そういう絶対的な物差しを心に飼っていないことには、この世はまるで闇である。闇だから何でもおいしくいただけるのである。幸せであろう。しかし幸せより重いことが私にはどうやら、ある。幸せはもう、とうの昔に、諦めたのよ。

別に美食家を気取りたいわけでは、これっぽっちもない。どこぞのオーガニックグラノーラより1本満足「シリアルホワイト」バーが好きな人間である。あれはいいな。あれはいい。そうかグダグダ言う割には私の食生活はまったく美しくない。美しさより重いことが私にはどうやら、ある。ハピネスでもビューティでもない、何を大事に生きているのだろうか、私は。