ひとつ、最近避けて通っていたかなり難易度の高いタイプの仕事を引き受けてしまって、というか自ら難易度の高くなる方向に企画を導いてしまって、果たして思惑通り終わらせることができるのか挫けてやっつけになるのか非常に気がかりだ。他人事のような書きかたけど、現時点での自分のスキルなんて自分でコントロールできる性質のものじゃないんで他人みたいなもんだし。いずれにせよ、広げてしまった風呂敷をどうやって畳むかはかなり運任せとなりそう。以前に似たようなことをやったのでそのときの資料を引っ張り出してみるが、あまりレファレンスとしては役に立ちそうもなく、唯一、その仕事をやっていたときの興味とかムードを思い出すことができれば役に立ちそうだ、と思ってめくってみる。→ぜんぜんまったく思い出せない。

今日は花見を4つハシゴ、ジャリ連れ。社交云々の問題はさておき、やはりゴザに寝ころんで見上げる桜と花曇りの空、というのは格別のものがある。美しいとかイデオロギーとか御託を並べる前に、単純に身体的に、平衡感覚を突然ロストして、グラッと来ちゃいそうになるからだ。初夏、木洩れ陽に気づいて見上げた街路樹に三半規管を軽く乱されることがあるが、それをパワーアップさせた感じ。それで思い出すのが、最近では月に0.5回、いちばん多かった中学生の時では週に3、4回襲われる、主に就寝前の身体感覚が拡縮する感覚のこと。もちろんドラッグとかヨーガとかそういうの関係なくてね、たまに、なんてことなく起きるやつ。あれをうまく言い表してみたいんだけど、できるかどうか。

そもそも僕はあまりに無知なので、これがものすごーくポピュラーなものなのか、僕だけに起こるものなのか、もしくはその中間なのか、あまり話の俎上に上ったこともないからまったく定かではない。けれど、生理的にさして変わったところもないだろう僕に起こるのだから割と、たとえばときめいたときの胸キュンくらい誰にでも起こることだろうと思う(月並みな余談だけど、ほんとに胸がキュンとするんだと体験したときはえらい驚いた)。いまは書き表すことが目的だから調べるより思い出すことに心を向けるけど、書き終わったら症例をあたってみよう。いずれにせよ、そんなたいそうなものではない。誰にでもあるたいそうではないものを正確に書くことができるか、にトライしてみたい気分なの。いくつかの段階を踏んでいく。まずは、シンプルな観察から手を付けてみよう。

それがやってくるのはどんなときか、身体感覚から条件づけてみる。まず、辺りは静かだ。騒がしいところで出会ったことはないからこれは条件のひとつとしてまず入れておいていい。明るさは? これはあまり条件となりそうにない。自然光、照明下、そして消灯後のいずれでも経験がある。後に述べた条件のためくらい場所の方が多いには多いが。匂い? 関連づけられそうな記憶はない。肌触りも同様だ。一方で、決定的なのは意識の状態だが、ひとつはひどく眠いときで、これは昼夜を問わず、寝不足か退屈によって睡魔に襲われている、しかし寝てはいない状態で起きる。一方で、眠いはずなのに目が冴えてしまって眠れない、という状況下でも同じくらいの割合で起きる。まとめると、静かなところでネムネムもしくは目が冴えているとき、といった感じだ。ネムネムと目ぱっちりは一見相反した状態のようだが、眠気に強く関連している点において同じ現象の極が変わった現れ方だと思う。

それはどのように始まり、終わるのか。これははっきりとわかる。聴→視→感覚の順だ。まず辺りから音が消える。違うな。音は聞こえているんだけど、聴感上の音場が変化する。ひとつには多くの音源が実際より遠くに聞こえる。もうひとつは、極端にリバーブが浅く、というか無響室に入ったように残響が減少する。そして、冷蔵庫のモーターやエアコンの吹き出し音、ハードディスクの回転音など定在ノイズの定位がぐっと近くなり、むしろ頭の中で鳴っている感じすら覚える。ノイズのある特定の周波数、虫の声を連想することがあったから多分4〜5kHzくらいなんだろうけど、その辺りの倍音だけがより大きく、クローズアップして聞こえる。耳鳴りとは違って、あくまでも外音の一部周波数が大きく響く感じ。初期段階はこんなもん。

次に、視覚に変化が現れる。視野のあらゆるものがひどく遠くにあるように感じる。導入段階では、実際の距離感覚に戻ったり、ふたたび遠くなったりと揺れ動き、ここでやや目眩にも似たクラリ感を覚えるけど、いずれ遠い方に収束する。この最中に視点を動かすと元に戻ることも多いが、視点移動が終わった時点でやはり収束する。安定した状態になると、すべてが遙か彼方に遠い。キーボードまで5メートル、テレビまで120メートル、天井まで2万光年、は嘘で、1キロメートル、とかそんなの。焦点はぼやけていない。一時流行った立体視に挑むように焦点を遠くにあわせたような不明瞭さはまったく感じず、むしろあまりにくっきり、実際は見えていないはずの対象の細部までクリアに見えている気にすらなる。

ごめん、いまあまりに眠くてまさしくそんな感じになっちゃったんで寝まーす。