あー僕はマヌケなんだった、と思い出すことがままあります。思い出すってことは結構な確率で忘れてるってことで、そこらへんがマヌケのマヌケたる所以なんだろうね。きのう帰りのタクシーから降り始めた雪を眺めてたら、ずいぶん昔のバレンタイン・デイにも雪が降ってたのを思い出したり。

その日はきのうみたいなにわか雪と違って、そりゃもう東京としては豪雪って報道されちゃうほどの大雪。その日だけで15cmくらい積もったんじゃないかな。部屋の窓から降る雪をぼけっと見てた僕は、いいこと思いついた、といきなりダウンジャケットを着込んで、バイクのカバーを外してゴー。

こういうときの「ちょっといいこと」っていうのはたいていロクなことじゃないんだけど、このときもご多分に漏れずで。翌月には赤道にほど近い島に旅立つ、もうお別れも済ませていた友達がいたんだけど、あの人、南国に住むってことはもう雪なんか見られないんじゃない? って思ったわけです。

幾度となく滑ってはコケたりしつつ、深夜の甲州街道を走ってその人の家の前に着くと、1時間くらいかけて雪だるま作って帰ってきました。普段の僕の体力じゃありえないくらいデカいのを作ったんだけど、作ってる最中のことはあんま覚えてない。その人が起きてきて見つかると台無しなので、近くの駐車場で雪玉ふたつこさえてから運び込んだのくらいは覚えてるか。

割とよくできたので満足げにまたコケつつ帰って、あいつ笑うかな、なんて思って風呂で寝たんだけど、その晩、雪、やまなかったんだ。翌晩まで延々降ってさ。「誰かがかまくら作りかけてやめたのかな。うちの前にでっかい雪山ができててさ、いつまでも溶けなくて参ったよー」って話を耳にしたのはもう春になろうかという頃でした。もちろん黙ってたヨ。