MB101のプレゼンの日。班のみんなはその場で適当にしゃべるのだが、おれは英語でアドリブはぜったい無理なので、徹夜してスクリプトを書いて臨んだ。あと余計なこととは知りながらも、パワポ担当の女の子が作ったスライドを、断りを入れながらちょいちょい直させてもらったり。あとしゃべる練習を少ししてたら時間になってしまった。前も書いたけど、おれは発音矯正とかやってないので、声を張って大きな声でしゃべると鬼のようなカタカナ発音になってしまうのだった。恥ずかしいけど、日本人丸出しの英語でゆっくり大きな声でしゃべるしかない。

というわけで本番、悪い汗をびっしょりかいたが、プレゼンは無事終わり、ケロッグ先生からは「自分の教師経験で最良のプレゼンだった」くらいの言葉は引き出した。班のなかでも辛抱づよく俺にゆっくり英語で繰り返し付き合ってくれたアランとハグ。1円が動くでもないただの授業のひとコマだけど、うれしかった。そらな、おっちゃんな、これで食ってた時期もあんねんで。帰りにライティングセンターで英語のチュータリングの申し込みなどして帰る。

ところでプレゼン課題のおかげでアメリカの著作権の仕組みはかなり理解できた気がするので、簡単に書いておこうと思う。ここではメカニカルロイヤルティと呼ばれる、音源の販売で入ってくる印税についてだが、大別してPA(Performing Art)とSR(Sound Recording)という2つの権利が基本となる。PAは作詞作曲の印税のことで、法律で1複製につき1曲あたり最低9.1セントと決められている。ただしソングライターとアーティストが同一人物のときはComposition Control Clauseという条項により75%に減額される。これを音楽出版社と折半することになる。シンガーソングライターで10曲入りのアルバムが10万枚売れたら9.1×75%×10×100,000×1/2=3,400,000セント=340,000ドル=353万円か。ふむ。

一方のSRは録音を実演した者への権利を発生させる。Artist's Royaltiesと呼ばれるが、日本の歌唱印税と原盤権が分化してないものと考えられる。これはレーベルとの協議によって決められ、だいたいが卸売価格の8〜25%、なかでもボリュームゾーンは13〜16%であるとされる。日本だと1〜3%が相場なので何だそりゃと思うのだが、アメリカではスタジオ代もセッションミュージシャンやエンジニアへのギャラもPV制作費もプロモーション費用もマネージメントや弁護士の費用もアーティスト持ちなのであった。

だから入りも多く出も多い=ハイリスクハイリターンな商売であると言えそうだし、あとクラウドファンディングとかで制作費を募る仕組みが育ったのも自然に思われる。さてこのアーティスト印税にもさまざまな控除がかかってくる。まずBreakage Deductionといって製造・運搬過程で不良になる割合が10%程度見積もられていて、このぶんの印税は差し引かれる。歩留まり90%というのはSP盤時代の数字じゃないだろうか。次にFree Goodsといって、要はプロモ盤に当てられるぶんが10%程度差し引かれる。

さらにNew Media Deductionと言うレコード時代の亡霊がまだ生きていて「CDとかいう新メディアに関しては設備投資などリスクを加味して75%掛け」という不条理なことを言われる。すげえ。さらに信じられないことに25%前後をパッケージ費用として引かれ、ということはなんだ、たとえばレーベルが15%を提示してきたとしても15%×90%×90%×75%×75%=6.8%だ。PPD12ドルのアルバムが10万枚売れたとして820万円くらい。そこから前述のように諸経費を引かれるので、ちょっとPVに凝ったらすぐ赤字だ。日本の手取り1%、実はそれほど悪どくない(特に数の出ない人にとっては)。

プレゼンではこのあとダウンロード販売とストリーミングの印税計算の話をしたのだが、それは最近のトピックだし調べればすぐに出てくるので省略しまーす。来週のトピックはここ10年のトレンドである360度契約の話。